-METADOLL- 兄妹
「もう怖くないよ。もう大丈夫だから、ね?」と彼女は言った。
 以前そうだったような保護者然とした口調ではなく、支配者としてのどこか冷酷な口調で彼女は言った。
 ふとその表情が柔和なものに変わる。
 「もう泣かないの。怖いことなんてないんだから」彼女は僕の髪をそっと撫でてくれる。
 ……多分そうなんだろう。いや、きっとそうなんだろう。僕はそう思った。
 「う、うん、そうだね。僕、僕はもう怖く……ないよ」
 涙を浮かべたまま僕は彼女に、妹の双葉に微笑んだ。
 さっきまで抱いていたはずの恐怖は完全に消え失せ、双葉への感謝と親愛の情で満ちあふれていた。

 ……ついさっきまで僕は恐怖に震えていたはずなのに。

 妹と母さんを幽閉し続けた「奴ら」に拉致された僕が、僕でなくなってしまった事実に、身体を失ったことに震えていたはずなのに。
 本来の身体を奴らに奪われた僕の「こころ」が人工物のなかに……MB社製アンドロイド、通称METADOLLのなかに……存在していることに、涙まじりの抗議の声を上げていたはずなのに。
 そして僕の「こころ」がその容器であるメタドールの影響を受けていることを、声をからして否定しようとしていたはずなのに。

 僕の新しい身体は、とても可愛らしい少女の姿をしていた。
 それは僕に優しい言葉をかける妹の双葉よりも幼く見えるほどだった。
 同時にそれは性玩具として機能するように作られていることを、僕はもう知っている。
 必要と「設定」によって、「ごしゅじんさま」のどんな淫らな欲望をも受け入れ、それを歓喜しおねだりするセクサドールとして設計されていることを、僕はもう知ってしまっていた。

 いま、目の前のモニターで展開されている光景を見れば、いやでも理解してしまうだろう。


 「あ、あ、す、すごぉ……い。オトコのヒトのオチンチンに中からこすられてるよぉ!ああ、お、あは、あ、ああ……ん。これ、これ、これすごくイイよぉ。あ、ああ、ボク、ボク、すごく幸せだよぉぉ、あ、は、あ……」
 モニターの中で「僕」は虚ろな感謝の声を上げ、どんよりした瞳から喜びの涙をこぼしていた。
 そこでは「僕」は以前に通っていた学校の制服……当時身につけていた男子制服ではなく、女子の制服……だったものを肌にまとわりつかせてあんあん鳴いていた。
 信じられないほど太った男のお腹のうえに仰向けに乗せられて、後ろからペニスに貫かれて揺すられては歓喜の声を上げていた。
 後ろからいやらしい手つきでやわらかなバストをいじられると、つつっと涎を流して喜んでいた。
 双胸の尖りを転がされると「ああ、ああ、すごい!すごぉいッ!」と泣きながら歓び、背後の男に「ほぉ、チクビに悪戯するとさらに締め付けが強くなるねぇ、ほらあ!」とぎゅっと指で摘まれた瞬間、少女は男の身体の上で全身を痙攣させつつも弓なりにのけぞって震えていた。


 僕はもう知ってしまっている。
 僕はもう僕でなくなっていることを。
 必要と「設定」によって「ごしゅじんさまのどんな淫らな欲望をも受け入れ、それを歓喜しおねだりする少女型メタドールになってしまったことを。

 けれども僕はまだ分かっていなかった。
 本当に理解など、できていなかった。

 この映像を、「僕」が見も知らぬ醜悪な男に犯される映像を双葉に見せられたときに抱いた感情がきれいさっぱり消えてしまっていることに疑問すら抱けない事実に。
 双葉に頭を撫でられるうちに僕の心の中は幸せでいっぱいになり、それどころかモニターのなかでペニスに犯される悦びを叫ぶ少女へ抱いていた恐怖や嫌悪が、全く別の感情に変換されている事実に。

 「ふふっ」すぐ後ろで双葉が笑った。「お兄ちゃんたら、自分があんなブタ男にレイプされている映像に欲情しちゃったのね」
 僕はこくりとうなずいた。葛藤も反発も、その感情が浮かんだとたんに蒸発していた。
 「しかたないよね。だってお兄ちゃんは『生まれて初めてのセックス』があんな最低のレイプなのに、あんなに喜んじゃうような淫乱人形なんだから」
 「あ、ああ……」妹の言葉に胸が締めつけられる。双葉は、双葉はこんな残酷な言葉を口にするような子じゃなかったはずなのに。
 でも、僕がそれを悲しく思えたのはほんの刹那。
 次の瞬間には僕は、妹の意地悪な言葉に発情し、ショーツの中にぬるぬるした「お汁」を分泌してしまった自分を発見する。
 「いいよ、お兄ちゃん。オナニーしても。許可してあげる」うってかわった妹の優しい声に僕のなかでなにかがかちりと切り替わる。
 僕の心の中でめまぐるしくシグナルが飛び交う。
 「う、うん。ありがとう。双葉、優しいね。ありがと……ね」
 感謝の言葉もそこそこに、僕はショーツを下ろし、はしたなく大きく脚を拡げて無毛の女性器へと指をねじ込む。
 信じられないほど気持ちよかった。
 僕のぬるぬるした襞は指に貪欲に絡みつき、きゅうきゅうと締め付けて快楽を貪ってしまう。指を曲げ、少し動かすだけでお腹の奥がどんどん熱くなってくる。
 それだけではない。
 曲げた指で狭い壁を擦ると、ぱちぱちと目の奥で火花が散った。
 「Gスポットの性感パラメーター+25でこうなっちゃうんだ。女の子になったお兄ちゃんって、ほんと、スキモノなんだね」
 「あ、ふぁああっ……イイよぉ、すごくイイよぉ」双葉がなにを言っているのかも分からない。情けなくも恥ずかしい声を僕は止められない。目の前の姿見に発情しきった自身が映っていることを指摘されても、指を声を止めることはできないのだった。
 「ふふっ。お兄ちゃんったら、『女の子の部分』をいじるの初めてなんでしょ?えっと、真衣さんだったっけ?お兄ちゃんと付き合ってたコ。あの子とはキスしたこともないんでしょ。当然彼女のソコなんて見たことないし、いじったこともないんだよね」
 「ない、ないよ!僕、僕、お○んこ触るの初めて……だよ」
 「なのに、とっても上手なんだぁ、くちゅくちゅいう音がわたしにも聞こえるよ」
 「だって、だって、だってぇ……」僕は涙をこぼすことしかできない。悔しくて、恥ずかしくて心が焼き付きそうだった。
 「いいのよ。お兄ちゃん。だってしょうがないんだもの」双葉の声は残酷で同時にとろけるように甘い。「お兄ちゃんはだって、メタドールですもの。男の人にえっちなごほーしすることだけが存在理由の心を持ったエロ道具なんだからね」
 「ああっ!」頭の中で火花が散る。残酷な言葉をずっと会いたかった妹に投げかけられられているにもかかわらず、僕はそれによってすさまじい快楽を得てしまっているのだ。
 「好きなだけいじっていいから、何時間でも遊んでていいから。でもね、お兄ちゃんはオナニーじゃ絶対に『イケ』ないからね」
 「ひ、ひどい!双葉、双葉、ひどいよ、お願い、お願い、いまだって、いまだって……」
 永遠に続く快楽の上昇カーブに翻弄される僕は、泣きながら妹に慈悲を乞い、懇願する。
 そのあいだもちくちくと貪欲にうごめく指を止めることができないまま、妹に絶頂を与えてくれるようにおねだりしていた。

 でも、そんな僕に双葉はくすくす笑うだけ。
 「やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんの反応を残したままのほうが、ずっといいよ。さっきみたいなセックスプログラムの『味付け』レベルで意志を残してるときよりも、いまのお兄ちゃん、ずっと素敵だよ。お兄ちゃん、あのね、双葉はお兄ちゃんをとっても素敵なメタドールに仕上げてあげるから、楽しみにしててね。そう、どんなメタドールよりもいやらしくて、素敵で『御主人様』の評判のいい玩具人形にしてあげる」
 そうして双葉は僕の頬をひんやりとした掌でそっと挟み、まるでキスでもするかのように顔を近づけた。
 「完璧に仕上がったら、まずはパパのところに帰してあげる。パパにお願いして、パパのおちんちんで幸せにしてもらうのよ。きっとパパも、お兄ちゃんに躰に夢中になって、きっとココに帰ってきてくれるわ。そしたらその新しいお兄ちゃんの『ココロ』をダビングしていろんなメタドールに入れてあげる。ふふ、そのサービスや快楽の内容を何人ものお兄ちゃんたちの間で共有できたら、きっと凄いことになるよ」
 僕の驚愕の表情をじっくり観察してから、双葉は僕の頬にちゅっとキスをした。
 「うん、いまはね、メタドールの精神コピーは取れないけどね。量子状態を同一のまま複写分離することはできないから。でも、『あのひとたち』はできるって言ってる。パパはその分野の第一人者だし、あたしはパパからそれについて聞いているはずだから。だから……」
 双葉は僕にもういちどキスをする。
 「楽しみにしててね、お兄ちゃん」
 そして彼女は軽やかに身を翻してこの部屋から去るのだった。

 ベッドの上で泣きながら妹に慈悲を乞い、懇願しつつも、オナニーを止めることのできない少女人形を置き去りにして。


◆◆◆◆


 自分が住んでいた世界が牢獄に近いものであることを知ったのは、ほんの数年前。
 僕が十歳になったばかりのこと。
 メタブレイン社の研究者であった父さんが僕の手を引いて、後戻りのできない一歩を踏み出して「L機関」に庇護を求めてからのこと。
 メタブレイン社の高度研究施設で厳重に「保護」されていた僕たち家族の半分が自由を得た代わりに、離ればなれになってしまってからのこと。


 「状況は最悪です。心苦しいですが、警護体勢を最高レベルまで上げさせていただきます」
 僕たち父子の警護役として「L機関」から派遣されているアキラさん(名前は男のようだが女性。ただしすごい美形なうえに長身なので、僕の通っているクラスの女子には、僕の送り迎えにやってくるアキラさんのファンクラブを結成しているものさえいた)はキッチンで憤然と足を組んだ。
 テーブルの上に置かれているのは僕の携帯電話。
 大きめの画面に映っているのはショートメッセージ。
 「やっと見つけた。お兄ちゃん!双葉を助けて!」
 添付されているのは「いまいるところ」と称した地図。
 そして少女の、妹の双葉の画像データ。
 彼女はまったく変わっていなかった。当たり前だ。彼女は双葉なんだから。でも、その表情は同時にとても不安げで悲しそうで、さらにその瞳には僕の知らない冷たい光が宿っているように思えた。
 メッセージは単純だった。
 「このメッセージは、ご子息の、トシアキ君の携帯に直接送られています。こちらのサーバーを完全にバイパスして」アキラさんは溜め息をついた。「トシアキ君が我々に教えてくれなかったら、わたくしたちはまったく気がつかないところでした。つまり……」
 「情報戦では彼らのほうが数歩先を行っているわけだ」父さんが静かに指摘し、アキラさんはうなずいた。
 「双葉ちゃんがMB社の完全な支配下にいるのは間違いありません。このメッセージが彼女の本心からのものでないことは明白です」
 「そのようだ。四年かけて……彼らはあの子を……双葉を我がものにしたのだろう」父さんはうなずく。メガネの奥に涙が光っていることに気づいたのは僕だけだろうか。
 僕も同意見だった。つまり、ここにいる誰もが双葉の送ったメッセージを救援のメッセージだと思っていないのだった。
 「こちらも手を打つときなのだろうな」父さんが辛そうな表情で僕を見る。僕はなにも言えなかった。
 「ごめんなさい。トシアキくん」アキラさんが僕の顔をのぞき込んで力なく笑った。「しばらくの間は、あなたとお父様を完全警護することになりそう。鬱陶しいと思うでしょうし、これはまるで『彼ら』とおんなじやり口だけど……」
 「いいんですよ。アキラさん」
 僕は溜め息をつきながら言った。そうでもないと、目の前の文部両道才色兼備なお姉さんは泣き出してしまいそうだったから。


 しかし彼女の、「L機関」の努力を嘲笑うかのようにそれは実行された。
 学校帰りの僕は彼らに襲撃されたのだった。
 それも、迎えに来てくれたアキラさんの車に乗ってから、彼らは襲いかかったのだった。
 防弾仕様のはずの車に信じられない穴が開き、ガラスが砕け散った。
 方向転換して脱出しようとした車は、バランスを崩して舗道に乗り上げる。
 車外にアキラさんが投げ出されるのを目にした直後、僕の意識は急激に薄れる。

 「見つけた。お兄ちゃん。やっと逢えたね」
 そんな双葉の声が聞こえても、僕にはそれが幻聴としか思えなかった。


◆◆◆◆


 「METADOLL Type−SEXROID MBSX−2874F AKI 動作チェック、正常。起動シマス……」

 ベッドの上に少女は身を起こし、首をかしげて男の方を見た。
 「アキちゃんっていうのかい」でっぷりと太った男は息を荒げつつ訊ねた。
 「ハイ、私ハ、MBSX−2874F 個体識別名 AKIデス……御主人サマ」少女の視線は男の指輪に釘付けになっていた。
 「そうだよ。ボクはアキの御主人さまだよ。このエンゲージリングがある限りね」太い指をひらひらさせて男は笑った。「さ、もうちょっと詳しく教えてくれないかな。アキはいったい何者なのかなぁ?」

 少女は少し……一〇〇ミリセカンドほどかけて、自身に与えられたコマンドを解釈する。
 ……第一種優先順位指令において、MBSX−2874FはMB社へ奉仕せねばならない。またMB社に敵対する行為をとってはならない。
 ……第一種優先順位指令において、MBSX−2874FはMB社の関係者に害を与えてはならない。
 ……第二種優先順位指令において、MBSX−2874Fは目の前の人物へのサービスを拒んではならない。
 ・
 ・
 ・
 ……第八種優先順位指令において、MBSX−2874Fはマスターの性器によって与えられる刺激を、一般感情および常識以上のプライオリティでマスターに要望しなければならない。

 (馬鹿!止めろ!僕はいやだ!そんなことはいやだ!)
 ……精神コアに組み込まれた「人格モジュール」の叫び、トシアキの精神の抵抗も罵倒も瞬時に圧殺される。

 ふわっと「アキ」は微笑んだ。頬を染め、恋する乙女の表情で。
 ベッドの上の横座りの姿勢から、制服姿の少女はそのまま礼儀正しく正座すると三つ指をついた。
 「御主人様。お待ちしておりました」そして教わっていたとおりの「挨拶」をする。
 「アキは御主人様に気持ちよくなっていただくために存在しています」
 涼やかなしかしどこか平坦な声での挨拶は男の欲情を高めると同時に、「彼女の中への存在」の残酷な宣言でもあった。
 「アキのからだは御主人様がどう使っていただいても気持ちよくなれるように作られています」短めのスカートから覗く、ストライプのショーツに包まれたちいさなお尻がくりんと揺れた。「アキのおま○こは少女の締め付けと、成熟した名器の快感を同時に味わうことが可能です。あ、もちろん設定によってはただ硬いだけの未通穴にすることも、フィストファックも楽しめるゆるゆる穴にすることも可能です」
 彼女の声が震えたのは、少女とは思えない宣言にもう一つの魂が悲鳴を上げたためだろうか。
 「ほぉ、じゃ、後ろの方は?」
 「アナルももちろんお使いになれます。前の孔とは違う締め付けと熱さをご存分にお楽しみいただけます。エネマを注入いただいたときの反応もお望みのままでございます」
 「そ、それはいいな。じゃ2リッターほど注ぎ込んで、必死にこらえてるケツ穴にずぶずぶねじ込んでやるからな」
 (いやだ、やだ、やだ、お尻を犯されるなんていやだ!)
 少女の肩が震える。しかしそれはトシアキの拒絶の叫びのためではなく、彼女の作られた本能が「放出をこらえようと食いしばっているちっぽけなアヌスを鰓の張った亀頭がくぐり抜けてゆくときの絶望と苦痛を高位の快楽とする」よう再設定したからだった。
 「じゃぁさ、アキのお口もOKなんだな?」
 (口って……こんなのとキスさせられるのか?そんな……そんな)
 くすりとアキは笑った。
 「もちろんです。アキの唇はマスターのものです」ちいさなピンクの舌をちらっとのぞかせて少女は続けた。「それにあたし、キスが大好きなんですよ。御主人様とキスしているうちに、きっと何度もイっちゃうと思います。あ、それから、御主人様をペロペロするのも大好きです。御主人様の指も足も、オチンチンも、あ、アヌスも御奉仕いたします」
 「……やっぱりこのあたりの受け答え方がセクサドールだよな」
 けしてその年頃の少女が口にすることのない説明に、男は苦笑して振り返る。
 「双葉クン、この反応はなんとかなるんだろうな」
 「もちろんです。いまはあえて『お兄ちゃんの』意識は表層に出していませんから。いま『お兄ちゃん』の心は彼女が一秒間に何百回とシミュレートするセックスサービスの内容に溺れているところです」
 「双葉クンはメタドールの調整の達人だからねぇ。楽しみにしてるよ」男は下品に笑い、双葉は優雅に一礼した。
 「さ、アキ、ううん『お兄ちゃん』、もう一度御主人様にご挨拶して」双葉がキーを軽く叩く。
 「……あ、は……い」アキは正座を崩すとベッドの上で体操座りをする。短めのスカートからは少女らしいショーツとそれに包まれた『女』の膨らみが露わになった。
 そうしてアキはショーツのクロッチに指をかけ、ぐいと横へずらしてから男を見つめる。
 「アキは、御主人様へ御奉仕する知識はいっぱい持っていますけど、でも恥ずかしいことに、まだどの穴でも御主人をお迎えしたことはありません」アキの黒目がちの瞳はどろりとした欲情に染まっていて、彼女が人工物であるようにはとても思えない。「どうか、御主人様、アキの新品の穴を最初にお使いいくださいませ」
 粘度をました雫がショーツにとろりとろりとこぼれていく様子を目にした男は、獣じみた声をあげると制服少女へのしかかる。


 「いかがですか?」男へ呼びかける双葉の声は、純粋な好奇心以外のものは混在していなかった。
 「ボディに関してはまぁ、問題はないな」男の声に「あ、あー、あはぁ、あー」という間延びした愛らしい声がかぶる。
 「あとは体格と基本的な性向のマッチングですね。どうでしょう、アキは小柄ですからそのあたりをポイントにしたいんですけど」
 「たとえば?」
 「そうですね」双葉はパズルを解くときのような表情になった。「肩や腰を掴まれて、ベッドや床に押しつけられたらスイッチが入っちゃうとか」
 「なるほどねぇ」
 「大きな体にぎゅーって抱かれたら、軽くイッちゃうとかはいかがでしょうか」
 「最終的には『パパ大好きな女の子』に調整するんだろう?ならそういう反応はおあつらえ向きだな」
 双葉はくすくす笑った。
 「それから、抱きかかえられてのセックス、たとえば『駅弁』とか、いまみたいな変形女性上位とかがいちばん大好きな体位にしておきましょうか。ね?いいよね?お兄ちゃん?えっとそれから、この記憶は一度消しといた方がいいかしら?お兄ちゃんの意識をもう少し上層にセットしておいたときに、もういちど『初めて』を味わえるように。ふふっ、この映像を見た『女の子』のお兄ちゃん、どんな反応示すかしら」
 忙しくタイプしていた双葉が「Enter」キーをぽんと叩く。

 でっぷりとした男の腹の上で、彼に貫かれていた少女の声がさらにせっぱ詰まったものに変わった。

 「あ、あ、す、すごぉ……い。オトコのヒトのオチンチンに中からこすられてるよぉ!ああ、お、あは、あ、ああ……ん。これ、これ、これすごくイイよぉ。あ、ああ、ボク、ボク、すごく幸せだよぉぉ、あ、は、あ……」

 「そうよ、アキ、あなたは幸せになるのよ……お兄ちゃんといっしょにね」
 双葉はつぶやく。
 だが、彼女は自分がなにか大事なことを忘れていることに、そしていま一瞬それを思い出そうとしていることに気がついた。
 「幸福」にまつわる、肉親にまつわる、それはとても重要なことのはずだった。
 だが、圧倒的な内なる幸福感が押し寄せてきて、彼女の疑問は消失する。
 (いっしょ……しあわせ……そう、そうよ。しあわせ、そう、これはしあわせのための……しゅだん……なの)
 元「兄」だった少女のなかで、「兄」の精神が圧倒的な快楽への順応を開始し始めたことを端末から知った双葉は、にっこりと微笑むのだ。
SOV
2006年08月20日(日) 18時29分02秒 公開
■作者(または投稿者)からのメッセージ
METADOLLシリーズの協賛SSです。
ちょうどいい絵の手持ちがなかったので、直接投稿させていただきます。

8/20 誤字脱字(主に「てにをは」を)修正しました。

追記:みなさまコメントありがとうございます。評価いただけて光栄です。
メタドールのシリーズは「TS+催眠」の複合ネタなので、わたしにとってはとても美味しい素材です。
SFっぽいところも含めて。

これからも「切なくて、無情だけどエロエロえっち」さを追求していきたいと思っています。

これからもよろしくお願いします。