治療という名の……(前編)
 ……これは治療なんだ。これは治療なんだ。
 何度も何度も言い聞かせる。
 自分自身に、ひと突きごとに甘いあえぎを上げるようになった自分に自己嫌悪を覚えつつ。
 ……TS病に感染した俺へ担当医師が小声で、それも周囲の視線を警戒しながら提案した「治療」。
 それがこれ。
 男性とのセックス。
 いや、違う。彼らはただの男性ではない。
 彼らは元TS病の患者で、TSウィルスの抗体保持者なのだ。
 俺の担当医師は説明した。
 不治といわれるTS病から奇跡的に回復したものはごくわずかながら存在する。
 彼らはウィルスに対する抗体を持っているから、その抗体を取り込めばひょっとすれば回復するかも……。

 俺はその「治療」に飛びついた。
 それが常識的な「治療法」とはまるで異なる治療法であるといわれても、俺はそれを気にもしなかった。

 ……普通なら血清とかを造ってそれを注射するはず。
 ……たとえ抗体成分が精液の中にしか存在しないとしても、それを薬の形に普通はするはず。
 ……その抗体が子宮粘膜からしか吸収できないとしても、こんな直截な方法はとらないはず。

 そんな常識などもう、俺の頭の中から消えうせていた。
 医師が準備してくれた「元TS病患者たち」とのセックスを、それも膣内射精が必須の交わりを、俺は承認……いや、懇願してしまったのだ。






 だから「俺」は、こうやって男の下であえいでいる。
 部屋のあちこちに置かれているだけでなく天井を覆っている鏡、そしてモニターがその様子を映し出していて、俺はそれを嫌でも目にしてしまう。
 鏡のなかでは、モニターのなかでは、すこし大人びた少女が男の下であえいでいる。
 シャワーを浴びたばかりの輝く肌を男達の指で下で蹂躙され、異性の視線を引きつけずにはおられない量感溢れるバストを玩ばれた彼女は、ぎゅっとシーツを握りしめたまま大きく脚を拡げて男性を受け入れていた。
 男が腰を乱暴にグラインドさせるたびに少女はのけぞり、食いしばった歯のあいだから苦痛と甘え声の混じった吐息を漏らす。
 「あ、う、あぁ……く、ふぁ……」
 「おっ、だんだんイイ声出すようになったねぇ。双葉クンよぉ!」
 「あ、お、オレは双葉じゃなくってアキヒコ……あ、ひ、ひぁ!」
 男に腰を大きくグラインドされ、鏡の中の少女は一瞬意識が飛んでしまう。怜悧な美貌がたちまち幼い少女の泣き顔になった。
 「そんな男の名前じゃこっちが萎えちゃうじゃないか。だめだめ、お前はいまは双葉なの、いい?」
 「あ……く、ふ、わ、わかり……ましたぁ」
 ぐいと揺すられると桜色の唇からは従順な言葉が勝手に漏れる。
 処女喪失の痛みは事前に挿入された錠剤でほとんど感じられなかったとはいえ、男性のペニスに自分の体が次第に順応しつつ……いや、快楽を感じつつあるのが怖い。
 これは治療なのに。ただの治療なのに。

 「ほら、ちゃんとサービスしないと、オレタチ、『イケ』ないよ?ただのマグロ女じゃだめだめ」
 「でも、でも、俺、俺、男だし……」
 頬を軽くぶたれた。
 「ほら、また萎えるようなことを言う」
 「……ごめん……なさい」
 そうなのだ。
 「俺」は彼らを欲情させて、たっぷり快楽を感じさせなければならないのだ。

 だからぎらぎらとした男たち……何と4人も!これだけのザーメンを受け入れないと治療できないらしい……の視線を感じながら、俺はパジャマを脱ぎおろし、ひどくいやらしいデザインの下着をゆっくりとはずしたのだ。
 だから彼らとキスもしたのだ!16歳の「俺」はまだ女の子とキスをしたこともなかったのに、彼らと舌を絡め、タバコ臭い唾液を喉を鳴らして飲んだのだ!
 だから男たちと一緒に浴室へ向かい、全身を使って「サービス」したのだ。ふるふる揺れるほど育ってしまったバストに悪戯されても微笑むことしかできず、さらにはそのおっぱいに石鹸を塗りつけて彼らの体にそれをこすりつけもしたのだ。
 だから彼らのペニスをほっそりしなやかな指でしごき、あるいは先端のぬるぬるを塗り広げることもしたのだ。「さすがに慣れてるねぇ。ツボを押さえてるって感じ?」と笑われても「あ、ありがとうございます」としか言えなかったのだ。
 だからそのぎんぎんに硬く立ち上がったペニス……それらはどれも信じられないほど鰓が大きく張り出し、異様な瘤まであった……をく、口に、口にすることさえ了承したのだ!
 だから言われるがままにそれに唾液をたっぷり乗せた舌を絡め、口をすぼめてちゅうちゅう吸い、喉奥を突かれてもがまんしたのだ。

 そうしないと、俺の子宮に彼らは精液を注ぎ込んでくれないのだから。

 でも、でも!これは治療なのだ。
 気持ちよくなってはいけないのだ。
 そう、俺は快楽なんて感じていない!
 お風呂で全身を……特に胸をたっぷり弄り回されてあんあん啼いて、腰が立たなくなったのは、そう「反応」したほうが彼らが欲望を感じてくれると考えての「おしばい」だったのだから!
 「女の子の部分」を彼らに丁寧に洗ってもらったときにおしっこを漏らしてしまったのは、けして、けっして気持ちよかったからではなく、その刺激に驚いたために過ぎない!
 4枚の舌に全身を嘗め回され、40本の指で全身をいじられたときに意識が何度も跳んだのも、それはあまりに異質な刺激だったから。ビデオで後から見せてもらったそのときの表情が至福の笑顔だったとしても、それは俺の本心じゃない!

 「お、あ……ふ、ふぁぁ!あ、あ、なに?なに?いまの」
 「そうか、ここが双葉の感じるところか、よしよし、ほら、こつん、こつん、こつん……」
 「ふ、ふぁ、あ、おああ、だめ、らめ、らめぇ……」
 男の腰使いに合わせて、オレは声を上げ始めてしまう。
 男の腰の後ろで、しっかりと自分の足首を結びつけてしまう。
 男がゆっくりじっくりと根元までねじ込んだペニスをきゅうきゅうと締め付け始めてしまう。
 そう、「喪失」の痛みなんてなかった。
 たっぷりじっくり弄られて「ほーら、双葉のちっちゃな下の『お口』、ほぐれてきまちたねー。でも、ちょっときつそうだから、これでもっとらくにしてあげまちゅよー」と笑われながらつるりと押し込まれたカプセルは数分のうちに溶けて吸収され、「俺」を初めて知る信じられないもどかしさ……お腹の奥がとろとろと煮えたぎる感覚……に半狂乱にさせた。
 「なんとかして!アソコ、アソコがむずむずするぅッ!お腹の奥も変だよ!熱いよ!ああ、ああ、なんとかしてよぉ」
 泣きじゃくる『俺』を男たちが笑っていることも気にならない。
 「あーあ、もうチンチン銜えたくってしょうがないって顔になっちゃって」
 「いままで感じたことのないところからの『むずむず』だからなぁ。そりゃ我慢できないって」
 「ほら、双葉クン、その切ない気持ち、おじさん達のおちんちんで直してあげまちゅうねー」
 ぐいと無惨に股を広げられ、男のいきり立ったペニスを迎え入れるまでにあったかすかな恐れや屈辱は、鰓の張った亀頭が狭い肉壁をごりごりこじ開け始めるととたんに蒸発してしまった。
 「おくすり」によって苦痛すら快楽へと感じてしまうようになったバージンホールを擦られる感覚に、初めて味わう「子宮感覚」に「双葉」は翻弄されてしまった。
 「お、双葉ちゃん、いまの締め付け気持ちいいよ。もう一度やってみようか……そうそう、それそれ。上手だねぇ。キミ、セックスの才能あるんじゃない?」
 「ち、ちがう!これ、これはからだがかってに、あ、ひ!、ふぅぅぅッ……」

 男たちを喜ばせるように身体がうねり、甘い声が唇から漏れる。
 でも、でもこれは気持ちいいからじゃない!
 治療のため!治療のためなんだから!
 「彼」に気持ちよくなってもらって、双葉の子宮にザーメンいっぱいだしてもらうため!
 そう、そう、決して自分自身の快楽のため……じゃ……。

 「お、双葉、いまイったな?」
 「イきましたね。チンポじゃ初アクメかな?」
 「かわいい声で鳴いた後は、涎までたらしちゃって」
 「でかいオッパイの先、かちんかちんにさせてるぜ、コイツ、よほどよかったらしいなぁ」
 4人の声が頭の中で反響していた。

 「オラぁ!こっちはまだいってないぞ!勝手に気持ちよくなってるんじゃねぇ!」
 「あ、だめぇ、らめぇ、イ、いまは、そんなに強く、ふ、ふああああ!ふ、く、あ、はぁ……」
 男は、双葉の「初めての男性」はニヤニヤ笑いながらさらに腰を打ち付けてくる。
 めまいがするほどの感覚、おなかの奥のほうからずんずんとやってくる感覚に、おれ……わたし……は翻弄されている。

 「双葉」男が長いキスのあとに尋ねる。もちろん硬くおっきなペニスであたしを貫き、支配したままで。「おじさんのチンポ、気持ちいいか?」
 こくりとうなずく。なんどもうなずく。
 もちろん演技としてだ。だってこれは「治療」なんだから。もともと双葉は男の子なんだから。
 「じゃ、言えるな。双葉」もう一人の男が耳元でささやく。あたしはうなずく。

 再び大きなストロークが開始される。
 あたしは必死になって意識を保ちながらさっき教わった言葉を叫ぶ。
 「あ、ああ!双葉、双葉はおちんちんが大好きです!だって、だって双葉は女の子なんですから!おちんちんとザーメンのためならどんな事だってします!ああ、おちんちん、おちんちんだいすき!」
 言われたとおりの台詞を必死で叫ぶ。だってそういわないと、おじさまはザーメンくれないっていうんだもん。
 自分の一言ごとに、何かが自分の中で変わっているような気がするけれど、もうそんなことは気にならない。

 自分がなにか叫んでいた。
 「ああ!ああ!双葉はこの治療、大好きになっちゃいましたぁ!」
 「毎日!毎日!この治療あるんですよね!?ああ、ああ、双葉、うれしい!」


 「いっぱい出していただいたのね。よかったわね……双葉ちゃん」
 看護師の制服を着たとても綺麗なお姉さんが笑っていた。
 双葉……ううん「俺」は身体を起こそうとして再びベッドに倒れ込む。
 まったく力が入らない。男たちに乗られ、揺すられ、いろんな恥ずかしい姿勢を取らされた女の子の身体は疲労困憊していたのだった。
 「無理しないで。全部お姉さんがしてあげるから」
 温かいタオルで全身を拭いてもらうのはとっても気持ちよかった。
 「初めて……だったのね」太股の乾いたザーメンと鮮血を優しく丁寧に拭っていたお姉さんがふわっと笑う。「あなたはとっても素敵な体験をしたのよ。あんな素敵な方々にこんなに素晴らしい治療をしていただけるなんて」
 「俺」は黙っていた。唇を噛んだままだった。
 なにか言ったら、なにを言っても、彼女の言葉を言葉を否定できない気がしていたからだ。
 「身体がこの感覚を覚えちゃうと、男に戻ったときに大変かも」とベッドに身体を投げ出したままぼんやり考えていたのだから。
 彼女は俺の顔をのぞき込む。
 「まだ混乱しているのね。でもね、もうじきしたら分かるわ。かならず」
 さらにくすりと笑った。
 「双葉ちゃんは確か『カテゴリーA』の患者さんだから、集中的に治療を受けることになるわ。みんな噂してるよ。『きっと双葉ちゃんにはすぐに効果が出る』って」
 「ほんと?」
 そっと彼女は俺の髪を撫でてくれる。
 「本当よ。ええ。あなたってとっても幸運な患者さんなんだから」

 そのときの俺は思っていた。
 きっと彼女は「男が知ることのできなかった快楽を知ることができたのは幸運だった」と言いたかったのだろうと。


◆◆◆◆


 「やほ、アキヒコ……元気?」
 ドアをノックすると同時に開けた隙間からのぞき込んだ彼女と目が合う。微笑を浮かべするりと猫のように病室へ入ってきた。制服の短いスカートからのぞく細い、まだ男の子のような脚がなぜか羨ましい。
 「うん、元気……身体の方は」オレはすこしだけ笑う。
 嘘だった。
 全身の筋肉が悲鳴を上げていた。特に股関節。
 いまのオレよりもひとまわり大きな男達に乗られ、硬く大きなペニスを迎え入れてしまった脚の付け根はいまだに違和感を感じていた。
 それだけではない。
 あまりに混乱したオレは「治療」が好きになりつつあるとさえ錯覚してしまったのだ。
 それはあまりに屈辱的だった。
 あってはならないことだった。
 「もう、元気だしなよ。ニュースでも言ってるけど、肉体自身は健康そのものなんだから、ストレス解消に運動するとか……あれ?メイクしてるの?」洗濯ものを整理してくれていた彼女がちょっと驚いた顔になった。
 「う、うん。ちょっと、その、クマ、できちゃったから、看護師のお姉さんがメイクしてくれたんだ」
 「ふーん」彼女はオレの顔をのぞき込み、しばらくしてからくすりと笑う。「なんだか『オトナ』って感じになっちゃったね。アキヒコ」
 そして振り返る。唇を尖らせる。
 「ほら、トシアキ、なにやってるのよ。はやくおいでったら!」
 よく通る声に促されてどこかおずおずとした態度で入ってきたのは、オレの同級生で親友の少年だった。
 「もう……いままでお見舞いにも来てなかったんだって?コイツは、ホント、友達甲斐のない……」少年の肘を掴んでぎゅっと引っ張る。
 「ま、まぁ、微妙な病気だからな、TS病は」オレは苦笑するしかない。
 「でも、アキヒコはアンタの幼なじみなんだから。もう……キヨヒコったら」唇を尖らせて傍らの少年……キヨヒコを見上げる少女の表情にオレはちくりと胸が痛んだ。
 「だ、だけどさ……ほら、なんて言っていいか……オレ、よく分かんなかったし……」
 キヨヒコはオレから顔をそむけ頭を掻く。
 でも、しばしばオレをじっと見つめているのだ。
 オレがキヨヒコを見ていないときに、彼女がキヨヒコを見ていないときに。
 オレには分かる。
 キヨヒコの視線がオレの胸に、パジャマ越しの太股に集中していることが。
 だけどオレはそれを非難する気にはなれなかった。
 いまのオレはブラなしCカップのバストでパジャマをくっきり持ち上げて、先の尖りまで露わにしまっているんだから。
 そしてたぶん、キヨヒコの「男」の部分は気づいてしまっているのだろう。
 オレがもう「オンナ」であることに。
 純潔をもはや喪い、雄の精を体奥へ放ってほしいとおねだりしてしまうオンナであることに。
 「ちょっと!キヨヒコ!アンタったらドコみてるのよ!」少年の視線の行方に気づいた少女が叫ぶ。「うわ、さいてー。いくら、いくらアキヒコの胸が、その、アタシよりおっきくなったからって!ちょっとそれって超セクハラ!さいてー!」
 「痛い痛いいたい!お前が勝手にそう言ってるだけだろ、アイツのほうが巨乳だって」
 「ぱーんち!」少女は明るく叫びながらチョップをキヨヒコの首筋に叩きつける。
 「馬鹿、それパンチじゃない。だけど、だって、なんかアキヒコって妙に色っぽくない?」
 「だーかーらー、それがセクハラだっちゅーの!」少女はキヨヒコの耳をぎゅうぎゅう引っ張って「折檻」する。
 まるで俺たちがガキだったころのように。
 俺たちがいつも一緒だったころのように。
 けれど揉もう、その関係には戻ることはできない事を、オレはそのとき知った。
 「ほら、もう、このエロガキ!アンタはやっぱり見舞いに来ない方がいい!」キヨヒコの背中を押して病室から押しだし、「あはは……ごめんね。やっぱりオトコはこういう時ってデリカシーないわ、また、今度、アタシだけで来るから」と笑いながら振り返った少女の瞳には警戒心とかすかな敵意があったのだった。
 キヨヒコの態度を糾弾し、彼の視線からオレを一刻も早く逃れさせようとする少女のスレンダーな躯が、キヨヒコの背中にぴったりと押しつけられていたからだった。

 オレは知った。
 彼女は恐れているのだ。
 もと幼なじみの肉感的な少女にキヨヒコを奪われることを。
 オトコの快楽を知っている美少女にキヨヒコが興味を持ってしまうことを。
 オレのこどものころからの知り合いでキヨヒコの幼なじみで、そして二週間ほど前の夕方に、オレとの関係を幼なじみから一歩踏み出したものへと変えたはずの紅葉は敏感になにかを感じ、無意識のうちにキヨヒコにじゃれついていることを。


 病室の窓から見たキヨヒコと紅葉の肩を寄せ合う姿に、オレはすこし切なくなる。


 だから、このような光景を目にするのも時間の問題だと分かっていたはずだった。
 でも、オレはショックを受けてしまう。
 食い入るように、でも姿をカーテンに隠してそれを見つめてしまう。
 お隣の窓越しの恋人同士の若いセックスを。
 キヨヒコと紅葉の拙い交わりを。

 たぶんふたりは俺が一時的に帰宅していることなんか知らなかったのだろう。
 キヨヒコが訪ねてくれた翌日、「入院が長引きそうだから、自習用の教科書を取ってきた方がいい」と担当医師に言われたオレは一時帰宅していた。
 両親も弟もそろって留守であることは意外だったけれど、メモを残して二階の自室で鞄に本を詰め始めた……。
 そのときだった。
 窓外の光景に気がついたのは。

 窓越しに見える隣家の二階。紅葉の部屋でキヨヒコは紅葉と抱き合っていた。
 オレにたいしては頻繁にスキンシップを求めてくるくせに、もう幼なじみじゃなくなったはずなのに、抱きしめようと子猫のように身をくねらせて、「あ、やっぱり……ごめん」とくすくす笑ってするりと抜け出す可愛らしい少女はキヨヒコのがっしりとした腕に抱えられたまま、うっとりと瞳を閉じていた。
 そのままふたりはキスをする。おずおずとした、けれども好奇心に満ちたキスをする。
 オレが「治療」のときにするキスなんかとはぜんぜん物足りないキスだけど、二人はそれしか知らないようだった。まだ。
 そのあいだにもキヨヒコの手は不器用に紅葉の身体をそっと撫でていた。
 ほっそりとしたウエストを、小さなヒップを制服越しに好奇心と欲望と、少女に拒否される恐れがないまぜになって震える指で撫でていた。
 紅葉は拒まなかった。
 キヨヒコに求められるとおりに制服を脱ぎ落とし、日焼けと素肌のコントラストのまぶしい下着姿を披露する。
 そのままベッドに押し倒される。
 キヨヒコは乱暴に急くように少女の肌にキスで印を付けてゆく。
 紅葉は拒まない。
 ぎゅっと目を閉じて、キヨヒコの拙い愛撫に小さく躰を震わせていた。桜色の唇を動かしてなにかつぶやきながら。
 窓越しのオレにその声は届かない。
 でも、なにを言っているかは分かる。
 ガラス越しでもその唇の動きを読むことはできる。

 「お願いだよ」と紅葉は泣いていた。
 「キヨヒコはいなくならないで」と紅葉はつぶやいていた。
 「アキヒコは……もう、戻ってこない……たぶん。あたしには分かるの」と双葉は泣いていた。
 「約束して、約束してくれたら……全部あげるから、だから約束して」と紅葉は少年の胸にすがっていた。
 幼なじみから恋人へ変化しつつある異性を失った少女は、頬を染めて涙をこぼして、もう一人に「お願い」していたのだった。


 そして、オレも涙をこぼしていた。
 なぜなら、気づいてしまったから。
 恋人にもうすぐなろうとしていた少女が親友に身体を開いていることに、オレは怒りも悲しみも感じていないことに気づいたから。
 それよりも別なことに心を奪われていることに気づいたから。

 ……オンナを知らない若いオス、彼がもしその震える手で自分の素肌を撫で回したらどんな声をあげちゃうんだろうと想像してしまったから。

 ……好奇心の赴くまま、胸の膨らみを未成熟な性器を弄り回す「カレ」の手つきと「抗体保持者」の愛撫……強引に「双葉」を押しつけ、好きな姿勢で嬲るくせにその指はさわさわとソフトタッチでそのうえ彼女が半狂乱になるまで「大切なところ」へは触れずに性感をひたすらに高めてゆく……をくらべてしまったから。

 ……オレの親友だった少年が不自由にズボンとパンツを脱ぎ捨てたときに勢いよく姿を見せたまだ半分隠れている亀頭のピンクにどきりとし、あれを口に含むよう命ぜられたらきっと真っ赤になりながらも音を立てて舐めた手、汗でむっとする香りを胸一杯に吸い込んで夢心地になるにちがいないと想像してしまったから。

 ……真っ赤になりながらペニスを熱を持ったオンナの秘壺へ突き立てようとする腰遣いに「ああ、あんな感じに性急に入り口やクリトリスをぐりぐり突かれたらどんなに切なくて、どんなに気持ちいいんだろ」と考えてしまったから。

 そう、オレは紅葉が親友に奪われたことを悔しいと感じていないことに気づいてしまったのだ。
 そう、それどころかオレは、キヨヒコに愛される紅葉に「双葉」を重ねてしまっていたのだから。
 二人の交わりをカーテン越しに覗きながら、ぺたんと絨毯に腰を落として、一心不乱にクリトリスとGスポットを刺激するオナニーに耽っていたのだから。


◆◆◆◆


 涙をこらえて駅へと歩く背後から声がかけられた。
 「双葉ちゃん、どうしたの?迎えに来てあげたよ」
 「いいです。ひとりで戻ります」
 「だめだめ」男の手が馴れ馴れしく肩にかかり、そのままCカップのバストをさわさわ玩ぶ。「二回目の『治療』の時間だよ」
 少女の足が止まる。小さく肩が震えはじめる。
 「ほら、時間ないから、おじさん達全員そろってくるまで来てあげたよ」
 五〇メートルほど先の公園、その入り口に大型のワンボックスカーがハザードランプを点滅させていた。
 「や、あ……あ、あの治療、変です、おかしいです……」
 少女の涙をこらえての抗議を男は気にもかけない。艶やかな少女の黒髪をいやらしく撫でつつ笑うだけだ。
 それどころか少女の肩を抱いていた手がゆっくりと腰へと滑り降り、さらにはワンピースを持ち上げているヒップを撫で回しはじめる。
 「最初の数回はさ、どうしても抵抗があるわけよ。でもさ、『良薬は口に苦し』って言うじゃない?」
 自分自身の言葉にげらげら笑いつつ、男は少女のヒップの弾力を楽しみ、そのままスカートの中まで指先を侵入させ、しっとりとした太股の感触を味わうのだった。
 「でも……あんな、ら、乱交みたいな……ひ!」
 「双葉」の全身が硬直する。
 「お利口な頭でいくら考えても駄目だぜ。双葉」男がささやいた。「口でいくら反抗したって、お前のオマタはもうトロトロになってるんだから」
 少女の太股の付け根をコットンショーツ越しに鷲掴みにして男は嘲笑う。
 「う、あ……ゆるして、ゆるしてぇ……」アナルを親指で、中指と人差し指で昨日処女喪失したばかりの秘所をぐりぐりといじられた少女は涙をこぼすしかない。
 「オーケィ、オーケィ、双葉、じゃあ大サービスだ」男の笑みはさらに大きくなった。「どうしてもこの治療に抵抗があって、自発的に『受診』できない双葉ちゃんには、おじさん達が強制治療をしてあげるからね」
 悪魔の宣告にしかし、がっちり肩を抱かれた少女は逃れられない。
 「ほら、あの大きな車、あの中に入っちゃったら、双葉クンはもうオジサンたちの思い通りになるしかないんだなぁ。可哀想に」
 「……あ、ゆ、ゆるして……」艶やかなリップを塗られた唇が震えた。
 「どんなに逃げても逆らっても、あちこちから伸びてくるいやらしい手に、双葉ちゃんはあんあん啼くんだよ」
 「うそ、うそ、うそ……」
 「環状線をぐるぐる回っているあいだは、どうやっても助けなんか呼べないし、当然誰も助けてくれないよ。そのあいだ、じっくりたっぷりおじさん達のオチンチンをハメてもらうんだよ……双葉」
 「……ひどい、ひどいよ……」
 「あの車の中にはいろんなところにフックがあるから、手足をがっちり固定されて、そのおっきなオッパイの先を全員で意地悪されたら双葉、オシッコ漏らしちゃうかもね。いやぁ、楽しみ楽しみ。それに天井から吊して前後同時ファック……いや、『治療』も面白いよ。好きなだけ腰が振れるし、車が揺れるたびにすごく気持ちよくなれるからね、双葉」
 「……あ……は……」耳元の悪魔のささやきは、つい最近まで少年だった「彼女」に淫らきわまりないイメージを刷り込んでゆき、彼女もまたその淫夢におぼれていく。
 少女の足元はさらにおぼつかなくなり、内股から膝へ伝わる何本もの粘液の筋が街灯にきらきらと輝いていた。
 「もちろん双葉のお口も、お尻の穴も全部ザーメン、いやいや『抗体』でいっぱいにしたげるから。もう、確実に『治療』が大好きになるようにしてあげるから。期待していてね、双葉」
 「あ……は……あ」がくっと少女の全身から力が抜ける。
 「イったんだな。双葉。おじさん達との『治療』を想像しただけで」
 「……は……い」夢見心地な少女のすぐ目の前でワンボックスカーが大きくスライドドアを開いた。
 闇の中から伸びてくる何本もの手。

 ……ああ、ああ、いまから、いまから「双葉」はこの「レイプカー」のなかで犯されちゃうんだ。
 ……もし、お巡りさんに見つかっても「治療ですから」ってこの人たちが言ったら、お巡りさんは車のなかで腰を振るアタシをちらちら見ながら、笑顔で「では気をつけて」ってそのまま通されるんだ。
 ……一晩中、ずっとずっと、おじさん達のペニスにずぶずぶ犯されて、好きなだけナカダシされたら、アタシ、もうこの「治療」がきっと大好きになっちゃう……。
 ……ああ、ああ、このまま治療を続けて、TS病が治る前に赤ちゃんできちゃったらどうなるんだろう……。

 「いい顔になってきたなぁ」
 「もう、頭の中だけで一〇回は犯されてるな、この娘は」
 「三回目からは、自分から『治療』を申し出てきますねぇ。間違いなく」
 「あの可愛らしい『オトモダチ』に治療のことをぺらぺら話しはじめて、変態呼ばわりされてもうっとりするぐらいのマゾ娘にしてあげましょうか」
 「それはいい。親友たちに軽蔑されたら、もう我々以外に頼るものはいなくなりますしねぇ」

 男達の声も笑い声も、双葉はもう理解できない。
 「さぁ、診察開始だよ」腰に回された男の手にちょっと力が込められただけで、ふわりと少女は大きく開いたワンボックスの中へ倒れ込む。
 奈落の闇から伸びてくる男達の腕の中へ、「双葉」はその瑞々しいボディを踊らせる。



治療という名の……(後編)
 「ほんと、双葉は素直で我慢強いコだ」
 耳元でささやかれる声は甘ったるく尊大だった。

 それは鏡の中の世界。
 ベッドの上で下着姿のCカップ美少女が頬を上気させて男に肩を抱かれている。
 彼女は瑞々しい素肌を撫で回され、艶やかな髪を玩ばれても抵抗しようとはしなかった。男はひどく上機嫌だった。
 「本当はこんないやらしいセックスなんかしたくないんだよね?双葉は。TS病の治療のためにがまんしているんだろ?」
 その言葉に少女の瞳から涙が溢れ出す。男の口元の笑みがさらに大きくなる。
 「そうだろうそうだろう、双葉は男とセックスなんてしたくないんだよな。本当は。でも、治療のために我慢しているんだ。偉いぞ」
 肩を震わせて少女はすすり泣く。唐突なまでに優しい言葉をかけられて、彼女はとまどうより先にこみ上げてくる感情を整理できなくなっていた。

 ……女性化した肉体を元に戻すために、TS病原体の抗体をもった男と交わらねばならない矛盾。
 ……男達に「その気」になってもらうために、女性として振る舞わねばならないジレンマ。
 ……男達……抗体保持者……の巧みなセックステクニックによって、自分の無垢な肉体がたちまちのうちに快楽を覚え込まされていく恐怖。

 そのどれもが受け入れがたい事実だった。
 だが、この数日のあいだに「彼」はすっかり魅力的な少女としての肉体をなんども男達に捧げ、むさぼられ、そしてそれから得られる快楽に溺れてしまう。

 男達との交わりを拒否することはできなかった。
 「彼ら」がお節介にも治療を強行するからだった。

 「ただの機械的な交わり」と無反応でいることもできなかった。
 「彼ら」がボランティアの代償として「男を楽しませる反応」を要求したのだった。
 男達のペニスでさんざんこすり立てられ、貫かれたあげく「態度が良くないので膣外射精しようか」と仄めかされてはどうしようもなかった。

 「彼」は美しく、肉感的な少女の肢体をすべて使って男達へ奉仕し、それの与えてくれる快楽を受け入れ、彼らに淫らに媚びなければならないのだった。

 再び少年へともどるために。

 そしてその混乱しきった心理状態のときに狙いすましたように与えられた、優しく理解ある言葉。

 ……本当は嫌なのに。
 ……自分の意志に関係なく。
 ……治療のためにやむなく。
 ……悪いのは「彼」でも「彼女」でもなく、男達。
 ……逆らえないようにされてしまったのだから。
 ……男達はすごく「上手」だったから。
 ……あんな反応をしたのは無垢で純粋な証拠。

 少女の耳元でささやかれるのは、彼女が欲しがっていた言葉、免罪符。
 それこそが彼女がなんども自己のなかで繰り返していた言葉。
 快楽と絶頂の余韻が薄れてくるに従って押し寄せてくる自己嫌悪を薄めてくれる魔法の言葉。

 それを優しくささやかれ、理解のある態度を示されてしまった。
 彼女は泣きじゃくりながらそれを受け入れてしまう。それ以上考える努力を放棄して。
 精神の奥底で響いていた警告はもう、聞こえなくなっていた。


 「昨日は本当によくがんばったね、双葉」
 「双葉」という勝手に付けられた女の子の名前で呼ばれても、もはや反発はなかった。
 くすんと鼻をならして男に身体を預け、髪を撫でてもらう。
 「……うん、ずーっと車のなかでいやらしいことされて……双葉、本当はいやだったんだよ」
 上目遣いで見上げる。
 「そうか、双葉はいやだったのか」
 「うん」
 男が太い指で少女のおとがいを持ち上げ、軽くキスをする。
 少女は嫌がらなかった。
 「可哀想な双葉。本当に可哀想な女の子」穏やかな口調でささやきかける男の瞳はひどく冷たかった。「逆らおうとしても、手足をがっちり固定されていたんだよな、かわいそうな双葉は。天井から吊られちゃって、どんなに逆らっても下からずんずん突き上げられてたんだよね」
 「そう、そうなんだよぉ」少女の声はどこか幼く、舌足らずなものになっていた。「おじさんたちったら、双葉の腰を掴んですっごくいやらしく揺さぶるの」
 「そうかぁ、抵抗できないかわいそうな双葉のオ○ンコはおじさんたちのオチンチンで好きなだけえぐられて、擦られちゃったんだね」
 ああ、と少女が熱い溜息を漏らした。
 「逆らえない、逃げられない双葉を、おじさんたちが交代で犯したんだ」
 男の言葉にぶるっと少女は躰を震わせる。男の手が美乳を弄っていることなど気にもならないようだった。
 「そ、それだけじゃないもん!ひとりがオチンチンで双葉を犯しているあいだ、ほかの人たちは双葉を痴漢してたんだよぉ」
 少女は唇を尖らせた。しかしその瞳はどんよりと濁っていた。
 「知ってるよ。双葉のとっても素敵なバストを好きなだけ玩具にして、びんびんに尖ったクリトリスもこねくり回してたんだろ?」
 「そう、そうなの、おじさんたち、ひどいんだよ」
 唇を再びとがらせる少女。そこへ男は唇を近づけた。今度は舌を絡められても嫌がらない。
 とろとろと唾液を飲まされているあいだ、ブラジャーをぷつりと外されてたっぷりした量感と張りをもったCカップバストを「昨日」と同じように悪戯される。
 「あ……あ……おじさまぁ。やだぁ、それ、それ双葉いやなの……乳首、いじわるされると、あたし、あたし……」
  長いキスを終えたあと、ようやく抗議する拗ねたような口調の少女に男は笑顔で提案した。
 「じゃぁ、双葉が逆らえないように、また縛っちゃおうか」
 傍らの引き出しから取り出されたのは革製の手錠。
 それを見ただけで少女の全身から力が抜け、とろんと視線が力を失う。
 「これ、付けちゃったら、双葉はもう、逆らえないんだよね……。双葉がどんなに嫌でも、おじさまたちの好きなように双葉はえっちなこと、されちゃうんだよね?」
 「そうだよ。そう、双葉はぜんぜん悪くないのに、おじさんたちのエジキになっちゃうんだよ」
 ああ、と双葉はわなないた。そうして男の命じるとおり、背中に両手を回し手かちりと拘束具を付けて「もらう」のだった。

 身動きのできなくなった双葉は、「やむを得ず」治療を逸脱したエロサービスを受け入れる。
 男の命じたとおり、ベッドの上に「休め」の姿勢で立たされて、男の手で恥ずかしい染みで下の翳りが透けて見えるようになったショーツをするすると脱がされるのも「仕方のない」ことなのだ。
 だって逆らえないのだから。
 だってどうにもならないのだから。
 膝までショーツがずらされても立ったままでいるよう命じられ、男の肉厚のよく動く舌で恥ずかしい部分をねぶり回されても逃げようとはしない。
 がくがく震える膝になんとか力を込め、つやつやした唇からけだもののような悲鳴を上げつつもすっかり熱い蜜をしたたらせるようになった花弁を男の顔に押しつけるポーズを崩すまいと努力していたのだった。
 なぜならそれは男にそう命じられたから。
 「治療のために男の硬くて太いペニスを奥までくわえ込むためには、ちゃんとした準備が必要だから」と懇々と諭されたから。

 ベッドにうつぶせになるように命じられ、お尻を突き出したポーズを取るように言われたときも彼女は従順だった。
 ずぶりとペニスが突き込まれたときには「ああ、ああ!おじさまに治療していただけて、双葉はとっても幸せです」となんどもなんども叫んでいた。


 そしてここで男は「揺さぶり」をかけてやる。
 まあるい弾力性のあるヒップを突き出して、男の性器に背後から犯されることに疑問も不満も感じられなくなり、自分を貫くペニスの鰓をきゅうきゅうと締めつけるとさらに幸福を感じられることを学習しつつある愛らしい少女の精神に揺さぶりをかけてやる。

 「ねぇ、双葉ちゃん」いつのまにかくりくりと勝手に動くようになった彼女の細腰をぎゅっと固定してから男はささやいた。「この治療、双葉クンには合っていないのかもしれないね」
 「え、え……どういう……こと……です……か」シーツにとろとろ涎をこぼしながら、だらしない横顔のまま彼女はつぶやく。
 「だって、早い人なら三日も抗体を注ぎ込まれたら変化がではじめるんだよ。だけど双葉クンはまだだし……」
 「遅い人……ならどれくらい……ですかぁ?」
 「うーん、三ヶ月くらいかなぁ」
 「じゃ、じゃぁ、三ヶ月、三ヶ月治療してください……」少女の花弁がひくひくと動き、男を窮屈に包み込む。まるでもっともっととねだるように。
 「でも、効果が出ないかもしれないんだよ。それに、双葉クンはこの治療法、あまり好きじゃないみたいだしねぇ」

 少女はしばし沈黙する。
 男には分かる。
 彼女の頭の中でどのような思考がはたらいているかが。
 「おじさま」双葉は身をよじらせて男を見上げる。その瞳には涙と感謝があった。「双葉はこの治療をもっともっと受けたいです」
 「どうして?」
 「だって、だってここであきらめたら、いままでのことが無駄になっちゃいますから。双葉、男の人とのえっちなこと、本当は嫌なんだけど、ここであきらめたら……せっかくいままで続けてきたのに……」

 ……ほらね。
 男はほくそ笑む。
 ……本人の望むと望まないにかかわらず犯されていたにもかかわらず、こう考えてしまうのだ。いままでの「努力」を無駄にすることを恐れるがゆえに、さらに深い奈落へ足を踏み入れてしまうのだ。

 「そうかい?でも、このまま続けちゃうと、男の人とのセックスが好きになってしまうかもしれないよ。キミはオトコノコなのに」
 青ざめる少女。しかし少女のまだ幼い肉襞はきゅうきゅうとペニスに絡みついていた。
 「毎日毎日、こんないやらしいセックス漬けになるんだよ。本当にいいの?」
 「ま、まいにち……こんな……ふうに……あたし……えっちなことされちゃうん……だ」
 「そうそう。毎日、それも何人ものおじさんたちにね。耐えられるのかい?双葉は」
 少女の表情は実に素晴らしいものだった。
 困惑と恐怖、それから予感と期待。
 それが彼女の美貌のなかでせめぎ合っていることは明らかだった。
 無理矢理に快感を覚え込まされ、被虐の悦びと服従への逃避を知ってしまった麗少女は、それらを全肯定する「理屈」を与えられてしまったのだ。
 それを否定するだけの材料を、もはや彼女は持っていないのだ。それらはすべて男達が削ぎ落とし、消し去ってしまったのだ。
 「お、お願いします……あたし、ちゃんと治療を受けます」
 双葉がそう決意することは男には分かっていた。

 他に道はないのだから。
 いままでの苦痛をすべて無価値なものとし、いままでに得た快楽をすべて捨て去り、このあとの希望を抹殺することなど、このうら若き乙女ができるわけなどないのだから。

 「そうか、よしよし。よく決意したな、双葉」
 背後から少女を貫いたまま、まるで教師のような態度で男は彼女の艶やかな髪を撫でてやる。
 少女は感涙に震えながら男のペニスをくい締め、さらには「許可された」腰の動きを再開していた。
 「ああ、ああ、ありがとう、ありがとうございます!おじさま、双葉、双葉は、がんばって、治療を受けます!あ、も、もう、わがまま……言いません。おじさまたちのおっしゃるとおり、聞き分けのいい患者になります。だ、だから、双葉と毎日、治療して……毎日、双葉のなかにざーめんを、お、おねがい、おねがいします……ッ」
 室内の隠しカメラに向かってにやりと笑って見せた男が、欲望に忠実に腰を振りはじめたため少女の健気で愚かな決意表明は途中でとぎれてしまった。

 その代わりに彼女の愛らしい唇から漏れるのは「牝」の声。
 男に求められたとおり快楽に逆らわず、ペニスを大好きになることを拒絶しなくなった元少年がなんどもなんども気をやる素敵な叫び声だけ。
 「あ、あぁ……ッ、いい!いい!おじさまのおちんちん、すごく素敵ですぅっ、ふ、ふぁ、うしろ、うしろからこすられると、こんなにいいなんて!ふ、ふぁ、くせになっちゃう、くせになっちゃう……」

 黒髪を振り乱して快楽をむさぼる彼女の心の中から、幼なじみから恋人へ変わりつつあった紅葉のことも、どんなことがあろうとお互いを裏切ることはないと信じていたキヨヒコのことも消え失せていた。

 ただ、そこにあるのは極彩色の快楽だけ。
 自分が幸福であるという信念と、それを与えてくれた人々への感謝の念。
 ただそれだけ。

 「あ、あ、おじさま!おじさま!おじさまぁ……」


◆◆◆◆


 「ありがと、お見舞いに来てくれて」
 「……そ、そんな、お礼なんて……幼なじみなんだから、当然じゃないの」
 テーブルを挟んで二人の「少女」が談笑していた。
 少女のひとりは柔らかな生地のワンピースにカーディガン姿。目鼻立ちのはっきりした黒髪の美人だった。
 もう一人はほっそりとしたボーイッシュな少女。首には「GUEST」と書かれたIDをぶら下げている。
 だが二人の会話はどこかぎこちない。
 入院患者の黒髪の少女も、お見舞いにやってきたらしいボーイッシュな少女もどこか緊張していた。
 「あ、あのさ!」しばしの沈黙ののち、見舞客の少女……紅葉……が急に明るい声で言った。「……ホント、ここってなんだか……病院じゃないみたい。立地もいいし、建物もすごいし。ここなんてまるでホテルのラウンジより上じゃない?コーヒーカップも、ソーサーも上等だよ」
 「わざとそんな造りにしてるんだって。入院患者の気が滅入らないために。そういえばこのレストランへ食事だけをするためだけに来る人もいるって聞いたよ」
 くすりと笑う少女に紅葉はうなずく。
 「……確かにそうみたいね。どう見ても患者やその家族じゃないひともけっこういるし」
 遺伝子レベルで肉体を変容させるレトロウィルスに感染し、その激変症状を発症させた幼なじみを見舞っている紅葉はすこしお洒落な外出着姿で周囲をそっと見回した。
 「でもさ、それにしても……ここのお客、患者さんを除いたらおじさんが多くない?」
 「そ、そうかな」柔らかな生地のワンピースにカーディガンを羽織った少女は口ごもる。
 しかし紅葉の言うとおりだった。
 テーブルを挟んで向かい合っているのは入院患者……ウィルスによって女性へと「生まれ変わった」患者と高級なスーツ、あるいはラフな服装ながらも高価なアクセサリーを身につけた男性ばかりなのだった。
 「それに……なんだか親子とか、親戚って感じでもないし……」華奢で中性的な魅力を持った少女は好奇心と疑念をあらわにしていた。
 「ね、ね、ね、紅葉」入院患者の少女はすこし青ざめていた。「あのさ、お、俺が……その、病院職員のアドレスで紅葉に送ったメール、読んでくれた?」
 しばらくの沈黙ののち、紅葉はうなずいた。
 「だったら、その、ほかの『見舞客』をあんまりじろじろ見るのは……」
 紅葉はじっと相手を見つめてから、「そうね、アキヒコ」と声を潜めてうなずく。そして一転朗らかな声へと切り替える。
 「そう……治療の方はどうなの?」
 「……え!?え、えと、うん。毎日……きちんと受けてるよ。その……人によって効果の出方が違うみたいで、三ヶ月しっかり続けるつもり」どこか大人びた印象を持った少女はさきほどの口調とはうってかわって朗らかに、そして周囲に聞こえるように返事をして、それから頬を染めてうつむく。
 「薬は飲んでる?」
 「え、へ、あ、うん、もちろん!ちゃんと飲んでるよ」
 「ふーん」紅葉はそれ以上は深く尋ねなかった。
 その後半時間ほど他愛のない会話を続けたのち、TS病患者の幼なじみは「またくるね」と小さく手を振って帰った。
 ワンピースの少女はその後ろ姿が見えなくなるまで、エントランスからじっと紅葉を見つめていた。


 幼なじみと別れたのち、少女は小さく溜め息をついてからエレベーターに乗った。
 「二四」と書かれたボタンを押す。
 しかしそのエレベーターは途中の八階で止まる。ぴくりと少女は身体を強ばらせた。
 ドアが開いて入ってきたのは愛らしい小柄な少女。少女はショートカットの前髪越しにアキヒコを見あげてにっこりと笑う。
 「秋葉ちゃん……俺の幼なじみ、あのメール……読んでくれたみたい」小声で、しかし興奮を隠せない口調でアキヒコはささやいた。
 「そう、よかった」
 秋葉はうなずく。冷静を装っているその表情にはうっすら紅が差していた。
 「アイツ……紅葉……早速訪ねてきてくれたんだ。きっとここが普通の病院じゃないことも分かったと思う」
 「そうね、じゃぁ……あと少しかも。それまでばれないように……」
 エレベーターが目的の階に止まると二人の少女は口をつぐんだ。沈黙を保ったまま自室へと並んで歩く。
 ふたりは隣同士だった。
 だから、「じゃあね」と手を振ったのちに自室のドアを開けるのも、「それ」を発見するのもほぼ同時だった。
 少女たちの病室にいたのは屈強な男性看護師たち。
 少女たちのベッド……それは少女たちが眠るには大きすぎるサイズだった……の上にばらまかれているのは色とりどりの錠剤にカプセル薬。
 「駄目だよぉ、双葉クン」いつのまにか少女の背後に立っていた担当医がにやにや笑いながらささやいた。「もらったお薬、飲まずに隠してたね?駄目だなぁ。それじゃ治る病気も治らないよ」
 「うそ!うそ!うそ、そんなの嘘!」震える声で少女は叫ぶ。「あの薬を飲んだら、頭がぼーっとして、どんなことを言われても信じてしまって、そして、そして、そして……いやらしくなっちゃうじゃない!これ、TS病のお薬じゃない!これは全然違う薬よ!」
 悲鳴を上げる少女の身体を男達ががっちりと掴んでしまうともう逃げられない。
 振り返ると秋葉も捕らわれ、目に涙を浮かべてこちらを見ていた。
 「放せ!はなせぇっ!もう、ここのことはバレてるんだから!メールで伝えたんだから!きっと警察がもうじき……」
 「双葉クンの幼なじみは、本当にキミのことを心配してくれてるんだねぇ」
 そう言って医師が取り出したのはなにかのプリントアウト。わざとらしく咳払いをしてそれを読むうちに、二人の少女……双葉と秋葉……の表情はみるみる絶望に彩られてゆく。

 「……きっとアキヒコは混乱しているのだと思います。だって、そうでなければ『イヤ』とか『助けて』と書いてある同じメールにそれがとても素敵で素晴らしいことのような表現をちりばめたりしません。どうかアキヒコの不安からくる妄想をやめさせるようカウンセリングの機会を増やしていただけないでしょうか」

 医師は顔を上げてにやにや笑う。
 「……紅葉……どうし……て……」
 ぽろぽろと双葉は涙をこぼす。紅葉はあのメールを信じてくれなかったのだ。それどころか、最も伝えてはならない人物にメールのことを伝えてしまったのだ。
 「紅葉君、医者を目指しているんだろう?お見舞いに来たときに『幼馴染みの様子を良く見守ってあげて、適切な対応を取ることは医師を目指すもののつとめだよ』とかなんとか言ってあげたら……ねぇ。実に見事な『対応』じゃないか」
 「ひどい……ひどい……」少女はすすり泣く。彼らは幼馴染みの夢や希望を逆手にとって、彼女をスパイに仕立て上げたのだ。
 「非道いものか。キミや秋葉のような反抗的な患者ですら、我々は大事に思っている明白な証拠だよ。それに添付されていたキミのメールを見たが、確かにずいぶん混乱しているねぇ。『とってもイヤなのに、悔しくって仕方がないのに、おじさま達のザーメンどくどく流し込まれると、頭の中が幸せでいっぱいになってしまう』なんてメールをもらったら、普通は正気を疑っちゃうよね。まぁ、中途半端に薬断ちしても、暗示は相変わらず強烈に作用しているから、キミはそのあたりをオブラートにくるんだ表現にしようなんて考えることもできなかったんだろうねぇ」

 げらげら笑う医師は秋葉へも歪んだ笑みを投げかける。
 「秋葉クン、これで三度目かね?まったくいけない娘だ。自分が厳重に監視されているものだから、協力者、いや共犯者を仕立てるのは感心しないねぇ」
 「……お願い、双葉……アキヒコ君にはひどいことしないで。薬の量を減らすことを提案したのも、監視されてない端末を使うように指示したのもわたしなんだから……その、罰はわたしだけ……に」
 「『秋葉クンの場合は身体が小さいからといって、投薬量を控えめにしないほうがいい。薬物耐性が強いようだ』と警告はしていたんだがねぇ。次からはこんな『おいた』をしないようにしっかり躾け直さねば……もちろん、双葉クンもね」
 少女達は悲鳴を上げ、助けを求めようとする。
 もちろんその叫びを聞くものはいない。

 そのフロアの「患者達」は事前にすべて移動させられているか、あるいは「TS抗体保持者による治療」の真っ最中でペニスに貫かれる悦びを回復の希望に重ねて随喜の涙を流しているのだから。


◆◆◆◆


 「処置拘禁室」と札のかかった部屋へ連行された二人の少女は、残酷でそして甘美な「緊急治療」を受けさせられた。

 隣り合うベッドの上に何一つ身にまとうことも許されずに大の字に拘束された少女たちにはまず薬剤が注射される。
 それも尋常な箇所ではなかった。
 怪しげなアンプルからたっぷり薬剤を吸い上げた注射器の針は少女の左右の乳首に、クリトリスにぷつりと刺さり、うわごとのように「やめてぇ、許してぇ」と涙をこぼしながらつぶやく少女たちをまったく無視してゆるゆると薬液を注入する。
 「おくすり」の効果はすぐに現れる。
 双葉の巨乳、秋葉のまだ半球状のバストとも、その先端が痛々しいほどにぷっくりと立ち上がる。
 クリトリスも同様だった。
 「ああ、ああああっ!やだぁあ!くり、くりとりすぅぅっ!じんじんするよぉ、かゆいよぉぉぉ!」
 全身を脂汗でぬめらせて双葉は泣き叫ぶ。
 しかしがっちりと展翅台の蝶のように磔にされた少女は指を使って敏感な突起を慰めることも、太股を擦りつけてクリトリスを押しつぶすことも、身体をねじって柔らかなシーツで刺激することも許されない。
 痛痒感のあまり意識が朦朧としてきたところでようやく男達が少女のベッドを取り囲むと、双葉はどんよりとした表情で「チクビ、チクビいじってぇ、クリトリス、クリトリスごりごりしてほしいのぉ、お願いだからぁ、おねがいらからぁ」とおねだりするようになってしまう。
 けれども彼女の願いは聞き入れられなかった。
 その代わりに与えられたのは、さらに無慈悲な「治療」。
 熱を持ち、ピンクに染まる肌にとろりとろりとローションを垂らされて、四人の男達に全身に塗り広げられてしまう。
 ただし少女がもっとも男達の指を切望する三つの突起……左右の乳首とクリトリス……を除いて。
 ひんやりとしたローションの感覚に小さく悲鳴を上げた少女は、やがて男達の指がぬるぬると全身を這い回る感覚に半狂乱になった。
 お臍をくすぐられ、足指を一本一本ぬるぬる磨かれ、アナルの皺に丹念にローションを塗りつけられる感覚に、二人の少女は涎をこぼして泣いた。
 滑らかなお腹のうえにいやらしくローションを塗りつけ、柔らかなバストを自在にかたちを変えて揉む指が乳首にまで達してくれないことを知ると双葉はこどものように泣きじゃくって「おねがい、おねがいだから双葉の乳首を意地悪してよぉ。もう、もう、絶対に先生たちのいうことには逆らわないからぁ」と叫んだ。
 それでも男達の指は彼女の望む箇所「だけ」を避けて、少女の肌を蹂躙する。
 ローションボトルの尖った先端を少女たちのひくつく菊門ににゅるりと挿入して中身を搾り出し、痙攣しのけぞる二人の美少女の姿を悲鳴を哄笑する。
 二人の懇願をまったく無視して鳶色のアナルを二本の指でぐじぐじと拡げ、さらにはローションのあぶくがぷくぷく出るほど残酷にこね回して、双葉に「お、おしりぃ、おしりが駄目になる、双葉の頭がおかしくなっちゃう」と声が枯れるほど泣かせてなんども潮吹きさせても、どくんどくんと脈打つように期待に震えるクリトリスへは一切触れなかったのだ。

 そうして強烈な悦楽を与えられつつ、敏感な部分への快楽を「おあずけ」され続けた双葉はついにその言葉を口にしてしまう。
 「あ、秋葉ちゃんが……秋葉ちゃんが悪いんだからぁ!双葉が先生たちの言うこと聞かなかったのは秋葉ちゃんにそそのかされたからなんだからぁ!それなのに、それなのに、双葉と秋葉がおんなじ罰なんて不公平だよ!」
 二つ以上年下の少女の勇気と洞察力に後押しされ、薬物の影響を脱して自由を得ようとしていた双葉はそこにはもういなかった。
 そこにいるのは快楽欲しさに、年下の恩人を非難し、彼女の行為を貶めることで支配者たちに媚びを売ろうとする哀れな牝奴隷だった。
 「く、クスりの隠し方も秋葉ちゃんに教わったんだからぁ!職員のIDを使うことを思いついて、職員さんをえっちにゆーわくしたのも秋葉ちゃんなんだから……あ、あ、ああああ……チクビ、チクビ、ちくびぃ……」
 「やっとちょっとだけ素直になったね。これはそのご褒美」
 左チクビを残酷にひねられ、男の太い指で押しつぶされた少女はしかし、歓喜に痙攣しながら潮を吹いていた。
 「秋葉クン、双葉ちゃんに嫌われちゃいましたねぇ。可哀想ですねぇ」
 「いやいや、そうでもないみたいですよ」秋葉の尻穴を弄っていた男が笑った。「双葉に非難されるたびに、このガキったらケツアナひくひくさせてアクメってます。コイツ、実は相当なマゾなのかもしれませんよぉ」
 「ひがう……ひがうぅ……」
 「涎垂らしながらそんなこと言っても、ぜんぜん説得力ないねぇ」
 医師たちに笑われながらも奥歯を噛みしめてなんとか耐えようとする秋葉。けれどもその意志の力はすぐ隣のグラマラスな少女が秋葉を非難し、穢し、貶めるたびに「ご褒美」をもらってはあげる歓喜の声でぐらぐらと揺れてしまうのだ。
 だから「クリトリスを電動玩具でびりびり虐めてほしいければ……」との仄めかしに双葉があっさり陥落し、「秋葉は双葉から『治療を受ける権利』を奪ったのだ」と少女から目を逸らすこともなく涙混じりに非難をはじめると、秋葉の信念はぽっきりと折れてしまう。

 「もう、もう、分かったからぁ。もう、言うこと聞くからぁ……もう、逆らったりしない。ボク、ボク、ここの治療が好きになるから……」
 双葉よりもさらに幼い声ですすり泣く彼女は屈服の証として絶対の秘密まで口にしてしまう。

 莫大な「基金」を運用し、感染者とその家族を支援するこの製薬会社の行為に違和感を覚えたジャーナリストが潜入取材を行っており、少女と協力していたことまで口にしてしまう。

 彼の調査によって知り得た事実……たとえばアキヒコの両親は「基金」からの莫大な援助を与えられることと引き替えに彼のここへの転院を認めたこと。さっぱり見舞いに来なくなったアキヒコの母親の身なりは急に派手になり、ガレージには高級外車が収まっていること……を使って「双葉」を説得して協力してもらったことを告白してしまう。

 そのジャーナリストの未来になど、秋葉はもうまったく興味はなかった。
 ただ三カ所の敏感な突起に「ご褒美」をもらい、双葉のように全身で快楽を得たいだけだった。

 そして、その願いは叶えられた。
 男達の指でぎりぎりと摘まれ、ひねられ、ぶるぶる震える電動玩具で悪戯された少女は牝の悦びで精神を塗りつぶされ、同時にそれを無上の幸福と理解してしまっていた。
 「親友の双葉」と声を揃えて淫歌を奏で、不自由な肢体を大きくのけぞらせて同時に潮を吹き、気をやることがとても素晴らしいことだと思えていた。
 いままでの自分の行為が、まるで理解できないことだと考えるようになっていることを、残念だとも思えなかった。
 いつのまにか拘束を解かれ、今度は四肢を不自由に曲げた姿勢に縛り直されて、高々とヒップを突き出すポーズでベッドに転がされても、尖った胸の先をシーツに擦りつけることのできる喜びしか感じられなくなっていた。
 だから「親友」が「秋葉を説得することができたご褒美」になにを貰えたかなど気にもしなかった。
 その瞬間までは。
 いや、その瞬間でさえも。
 まだまろみのたりないウエストをしなやかな指でぐいと掴まれ、ぬるつく秘肉に硬く、しかし体温のないペニスがずぶりとインサートされても、ただその快楽に感謝の声を上げて、「それ」をきゅうきゅう締めつけてしまうだけ。
 背後から聞こえる「ああ、ああ、秋葉を、秋葉を犯してる!偽ペニスで男になって秋葉を犯してる!ああ、ああ、ぐりぐりするとクリトリスとおなかの奥が突かれてきもちいいよぉっ!」という悲鳴のような歓喜の声も気にならない。
 双頭のペニスバンドを装着された双葉が美貌をどんより欲望に濁らせて、身動きのできない少女を犯すことを「許された」ことも理解できていなかった。
 卑劣なイボをもった人造のペニスに揺すられ、子宮口をすごいピッチでノックされる快楽に甘い声を上げるだけ。
 腰を振りはじめた秋葉によって、双葉の胎奥もまた掻き回されて、その素晴らしい刺激を双葉が美声で讃えている言葉も耳に入らない。
 双葉の狂乱に我慢できなくなった主治医が、彼女のアナルへがちんがちんのペニスをねじ込んでしまうと、双葉の「ああ、ああ、秋葉ちゃん、秋葉ちゃん、先生たちの言うことをこれからは絶対守ろうね!だって、だって、だってこんなに気持ちよくなれるんだものオ○ンコとお尻がこんなにいいんだもの!秋葉ちゃんをレイプできるんだもの!もう、もう牝奴隷でいいよね?!雌豚っていわれてもいいよね?!男の子になんて戻れなくってもいいよね!?」と啼いていることもどうでもよくなっていた。

 だってそんなこと、数分前に「分かってしまった」ことなのだから。


◆◆◆◆


 「お願いだよ、お願いだよ……アタシは、アタシはいいから、キヨヒコは……キヨヒコは……」
 紅葉の血を吐くような言葉も二人の美少女には届いていないようだった。
 「だーめ。だって紅葉は二つも悪いことしたんだから」自分に覆い被さる少年の髪を撫で、首筋にれろれろと舌を這わせてから「双葉」は告発を開始する。「ひとつはね、ボクの『治療』を中断させようとしたこと。この病院についての悪い噂をネットに流そうとしたでしょ?」
 「そ、それは、もともとアンタが、キヨヒコが教えてくれたことでしょ!あの面会のあと、やっぱりなにか変だと思って、ご両親がアンタの部屋を片付け始めたことも気になって……調べたら、ほんとに、ホントだったから……あ、おおおッ、お尻、おしりぃ……や、やめてぇ、ぜんごで、ぜんごでぴすとんされるとおかしく、おかひくなっちゃぅ……」
 紅葉の言葉は途中で途切れる。
 完全に「彼ら」に洗脳されて淫らなペットと化した幼馴染みの「元」少年が向ける殺意の混じった視線にひるんで。
 「双葉の担当医たち」のひとりのペニスがさっきこじ開けたばかりのアナルへ彼がピストンを開始したために。
 まだ幼馴染み一人しか許していなかった幼い肉体に巨漢のペニスを受け入れさせられたばかりか、それに貫かれたままでアナルセックスまで強制された紅葉は言葉を紡ぐことすらできなくなっていた。
 「もうひとつはね、それ」勝ち誇った表情で双葉は続けた。「ボクの今日の治療が中止になったこと。センセイたちったら、今日は紅葉の中にザーメンいっぱい注ぐから、双葉の分はないなんて言うんだもん」
 「や、やめてぇッ!今日は、今日はやめて!今日は危ない日なの!お願い、お願いだから!」
 「昨日から全部中出しにされてるくせに、いっつもいっつも泣いて嫌がるんだよなぁ。紅葉ちゃんは」
 「ひどい……ひどい……ゆるしてぇ」
 「センセイ」双葉が朗らかに言った。「紅葉はいままでゴム付きのセックスしか知らないんですって。どうかおじさまたちのザーメンを紅葉に染みこませちゃってくださいな」
 「お、双葉ったら友達想いのいいコなんだな」
 「あ、ありがとうございます……」頬を染めた少女はにっこり微笑む。

 そうなのだ。
 幼馴染みのアキヒコを取り巻く変化に、彼からのメールへの不信感を拭いきれなかった紅葉はその後、もう一度調査を開始しそして真実へとたどり着いて「しまった」のだ。
 だから彼女と、その恋人のキヨヒコはここにいる。
 紅葉が調査結果をマスコミに公表しようと決意したその日のうちに、二人は学校帰りに拉致され「事情聴取」が行われた。
 「彼ら」は効率優先主義だった。
 薬物と快楽は少女の儚い決意をあっさり突き崩し、彼らは簡単にほしい情報を入手できた。
 拷問などの効率の悪い手段は最初から考慮もされていなかった。
 そうして「用済み」となった二人に対し、お仕置きが行われる。

 「もう、もう、ゆるしてぇ!ゆるしてぇ!おねがい、おねがいです、やすませてください!」
 「いいのかなぁ。さっきまでは『キヨヒコのために頑張る』とか言ってたのに」
 「ああ、ああ……」少女の瞳が力なく泳ぎ、恋人のところへとたどり着く。
 全裸にされて後ろ手に拘束され、ギャグまで噛まされた少年を力なく見つめる。
 「あ、ああ、キヨヒコのオチンチン、またおっきくなってきたぁ……もうじき出ちゃうの?また出ちゃうの?」
 楽しげにつぶやく「双葉」の与える快楽に逆らうことができず、少女の中からペニスを抜くつもりが、そのまま勢いよく腰を叩きつけてしまう動作を繰り返す恋人を涙混じりに見つめる。
 「ん……んふっ。キヨヒコくんのお尻のアナ、すっごく美味しいな。すっかり柔らかくなっちゃったから、ボクの指、いれてもいいかな?」
 「ふぅぅぅッ!うぐぅぅぅ!」
 「あ、秋葉の言葉だけでまたおっきくなっちゃった。キヨヒコったらえっちなんだ。でもいいの?もう一〇回だよ。これからは一回出すごとにお注射一回だって。それでもいいの?」
 少年はぶるぶる震え、なんとか腰の動きを止めようとする。
 しかし担当医たちが「名器」と褒め称える双葉の淫花から与えられるペニスへの刺激と、まだ幼いながらも男性を追いつめることにかけては天才的な指技と舌奉仕を得意とする秋葉によるアナルへの快楽に、まだ若い彼は耐えることができなかった。

 三〇秒と経たずして、絶望的な声とともに少年は双葉の胎内へどくどくと精を放ってしまう。
 恋人の悲痛な視線を痛いほど感じながら。
 そしてくすくす笑う秋葉はテーブルから注射器とアンプルを取りだし、キヨヒコに見えるようにその中身を注射器に吸い上げる。
 「さぁ、三本目のお注射ですよ。患者さま」笑顔を絶やさないまま秋葉は慣れた手つきで少年の筋肉質のヒップに針を突き立て、ゆっくりと中身を押し出してゆく。
 「あーあ、また確率上げちゃって。キヨヒコ君ったら、スリルが大好きなのね」
 「うーっ!うーっ!うーっ!」
 TSウィルスの高濃度溶液を注射された少年は泣き叫ぶことしかできない。

 しかしそれでも、自分を包み込んできゅっきゅっと締まる柔らかでざらざらとした肉襞の快楽から逃れることができない。
 アナルをゆるゆると舐め、唾液を注ぎ込む唇の感覚が癖になって、ペニスをさらに硬くしてしまう。
 信じられないほどの暴虐に翻弄されているうちに、自分が聞いたこともない素敵な声で彼らを讃えはじめる紅葉に、怒りを覚えるとともに「雄どものペニスの虜にされた少女になった自分」を重ねてしまう。

 数分後、双葉の提案で少年は口枷を外された。
 少年の口から漏れるのは、拉致当初のような威勢のいい言葉ではなかった。
 「自分をこんなトラブルに巻き込んだ紅葉」への涙混じりの非難だった。

 さらに数分後、紅葉と同時に絶頂を迎えた少年は、さらに「追加のお注射」を受けることになる。
 歓喜にまみれ、涙をこぼして。


◆◆◆◆


 すすり泣く少女に彼女は声をかける。
 「辛かった?」
 「だって、だって、こんなの、こんなの初めてだし、あんなケモノみたいな……」
 「先生たち、とっても熱心に治療してくださったものね。でもね、あなたはとっても幸運なのよ。あんな素敵な方々にこんなに素晴らしい治療をしていただけるなんて」
 彼女は微笑む。先日TS病の劇症発現によって女性化した少年が、凛とした表情のかけらもなく泣きじゃくるさまがとても愛おしいのだ。
 まるで少女向け雑誌のモデルのようなすらりと肢体を力なく投げ出し、股間から乳白色のザーメンをこぽりと吐き出す無惨さにどきどきしてしまうのだ。
 「カテゴリーA」患者と認定された……遺伝レベルで変異が完了し、治療不能と烙印の押された……彼女が、この病気の治療法研究のための莫大な資金確保の手段として「再教育」されると思うと背筋がぞくぞくしてしまうのだ。
 「さぁ、綺麗にしてあげるわ。これからしばらく、付きっきりでお世話するからね」
 「あ、ありがとう、お姉さん……」ザーメンのこびりついた可憐な唇がおずおずと笑みの形へと変わった。「あの、名前……教えてください」
 にっこり笑って、その美しい長身の看護師は名を告げる。
 「『紀代』って言うのよ。自分でも好きな名前なの」
 キヨヒコという名前をもう思い出すことも少なくなった彼女は、そっと愛らしい入院患者の髪を撫でた。
SOV
2006年10月31日(火) 07時11分42秒 公開