星に願いを(コメントに補足追加)
「きよひこくんってメガネ外すと可愛い顔してるよねぇ」

注文されたビールのジョッキを周りの席に配りながら先輩が言う。

「いや、童顔なだけですって」

仕事中は帽子被ってるからだいぶ印象違うんだろうけど…

「そんなん飲んでるしー近づくまで知らない女の子かと思ったよ」
「あはは…」

乾いた笑いを発した俺の目の前にはかわいらしいグラスが置いてある。
甘い香りのする乳白色の液体がゆらゆらと揺れる氷を抱いていた。

「では、全員揃ったところで改めて…乾杯ー!」

チーフの音頭でみんながグラスを鳴らす。
俺以外はジョッキ…なんだかちょっと肩身が狭い。
ビールの味がわからないガキでごめんなさい。

「○○くんは××大卒なんだっけ?」
「あ、はい」

今日は新入社員さんのために開かれた親睦会。
高卒フリーターの誰かさんはちょーっとだけ居心地悪いわけですよ。

「きよひこくんもどんどん飲んじゃってねー」
「あ、ありがとうございますー」

なんでもない気遣いが心に沁みます、先輩。
将来のことを話しているのが遠くに聞こえる。
どこで間違えたんだろうなぁとか、人生やり直したいなぁとか、そんなことを思いながら俺の意識は少しずつ睡魔に蝕まれていき、やがて消えた。




「…で……部の予算は…」
「……2組の企画…一週間後……」
「…先生……コピー頼んで…」

なんだか懐かしい単語が並んでるなぁ。
今日の夢は学生時代かよ…寝起き鬱になるから勘弁してください…。

「ていっ!」

ごつん。
頭に衝撃を受けて脳が一気に覚醒した。

「いたっ…いな…ぁ?」
「目ぇ覚めた?ふたばちゃんはお疲れモードかぁ?」

目の前にいたのは中学時代の同級生の子。しかも若い。
予想外の人物の登場に口をぱくぱくさせる間もなく、周りの状況が目に飛び込んでくる。
コの字型に並べられた机、画用紙やプリントが無造作につっこまれたロッカー、『文化祭』と書かれた黒板などなど。
俺の記憶に間違いがなければ、そこは確かに俺が卒業した地元の中学校の3階の奥にある特定の生徒しか使わない部屋。

「生徒会、室…?」
「…眠気覚ましにこれ15部ずつコピーしてきなー。動くと目ぇ覚めるからさ」

会長から『前年度予算・今年度計画書』と書かれたファイルケースを受けとり、

「あ、はい…」

言われるがままに職員室へと向かった。




2階の職員室へと向かう階段の踊り場には大きな鏡があった。
俺の記憶では毎朝学ランやワイシャツのしわを直すのに使っていたそれが映していたものは、



「………っ!?」

メガネをかけ、髪を二つ結いにし、丈の少し長いセーラー服を着た少女。
顔には見覚えが…というか多少線が細く・若くなってはいるものの、間違いなく『自分』だった。
胸の名札には…『双葉』の文字。

「夢…だよな?」

ほっぺたをつねろうとゆっくりと持ち上げた右手が途中で止まる。
夢だとしたらここで目覚めるのはもったいないじゃないですか某スレ住人的に。

「…よし」

せっかくだから楽しもう。明日バイト休みだし。
妙なところで冷静だなぁと自分につっこみつつスカートのシワをなおして、俺は階段をてこてこと降りていった。



―――キィン

金属のバットとボールがぶつかる音。
窓の下に広がる夕焼けで緋色に染まったグラウンドでは、野球部が練習をしていた。
ふらふらと上がった打球はライトの浅いところで生徒のグラブにおさまり、間髪いれずにホームへと返球される。
小柄な三塁ランナーはクロスプレーでアウトになった。

―――タッチアップ遅ぇぞぼーっとしてんなコラぁ!

怒号がここまで聞こえてきた。
そんななんでもない風景に懐かしさがこみ上げ、切なさに胸が押しつぶされそうになる。
そういえばとしあきも野球部だっけ…。

小さいころからいっつも一緒にバカやってた親友。
泥だらけになって遅くまで遊んで二人揃って怒られたり。
掃除サボったとしあきを探しに行ったら時間かかって結局二人で反省文書かされたり。
まぁ、いつも暴走するあいつの手綱を俺が引いてる感じだったわけですが。
…あの日居眠り運転のトラックがあいつの自転車に突っ込むまでは。

やばい。視界がぼやけてる。
最近涙腺緩くなったんだよなぁ…。
コピーが終わり、プリントの山を抱えて階段を上がる。
途中の鏡に映った自分の姿に気恥ずかしさを感じつつ、帰ってきた生徒会室で足元にあった木材につまづいた。
重いものを持っていたこともあってバランスを保てなくなった身体はあっけなく倒れる。
周りがスローモーションになり、舞い散るプリントを眺めつつ、『あぁこれで目ぇ覚めるのね。ベッドから落ちるオチですかこれは』などとやっぱり冷静に考え、

ばたん。

「きゃう!」

盛大に転んだ。





ちょっと待てマジで落ち着け俺。
あの後何事もなかったかのようにこの夢は続いた。
みんなに笑われて恥ずかしさのあまり顔が赤くなって、おまけに涙目なもんだから本気で心配されたり。
もうそろそろ覚めてもいいんじゃない?
あんまりこんな夢続くとほんとに起きた時鬱になりますよ。
頭の中で勝手に声が再生される。
『朝おんのバーゲンセールやー!』お前誰だ帰れ。

「そろそろ下校時刻だから解散ねー」

帰るのは俺かよ。



秋口の寒さが身にしみる帰り道。
なぜかというか当然というか、女子の集団と一緒だ。
女の子と帰るのなんて久々だなぁなどと思う余裕はなく、さすがにこの異常事態に頭が警鐘を鳴らしていた。
マッドサイエンティストの知り合いなんていないし、雷に打たれた記憶もないし、取引を見るのに夢中になって背後から襲われて薬を飲まされた覚えもない。
あれか。やっぱり某所の住民が祈ったのか。

出口のない迷路をさまよう気分の俺とコンビニのお菓子の話題で盛り上がっている女子達を追い抜いて行った野球部の集団の中に、そいつはいた。
もう何年も見る事のなかった、二度と見るはずのなかったそいつの姿。

「としあき!」

咄嗟に叫んだ。
その場にいた全員の視線が俺に集中する。
冷やかされながらこっちに歩いてくるとしあき。
胸が高鳴るのを感じると同時に、今になって何を話せばいいのか慌てる。

「…なんだよ」

照れ隠しのぶっきらぼうな態度。
そういえばこいつ、女子苦手だったっけ?

「あ…えと…元気?」

なんだそりゃ。
自分で突っ込みをいれる。

「なんだそりゃ」

ごもっとも。

「用事ねーなら行くぞ」
「あ…うん…またね」

またも冷やかされながらチームメイトの元に戻るとしあきを見送りながら、今になって心臓が高鳴っていることに気付く。
きっと今顔も真っ赤だろう。夕焼けのせいじゃなく。
そこから家に着くまでの冷やかされ具合は負けない自信がある。



自分の部屋は面影こそあるものの女の子のそれになっていた。
ワイシャツとズボンがかけられていたハンガーにはセーラー服とスカートがあり、その横の本棚の上には昔作ったプラモではなくクマやネコのぬいぐるみが並べられている。
しかし不思議な事に違和感はない。
学校で自分が『ふたば』と呼ばれたことについても。
女の子として生きてきた知識というか記憶というか、それがあるのは大きな救いだった。
変なことして正体がばれたら蘭やおっちゃんにも被害がおよぶって誰かも言ってたしな。

とりあえずシワにならないように制服を脱ぎ、ハンガーにかけ…たところで赤面した。
男の自分の部屋にはなかった姿見に映ったのは下着姿の女の子の姿。
小さい子に興奮するような性癖は持ち合わせていないが、自分の身体が女の子になっている倒錯的な状況は、『男』の自分を興奮させるのに十分だった。

ぞくり、と背筋が痺れる。
ブラ越しに胸を触ると、小さいけれど確かにそこには膨らみがあった。

「んっ…」

下着をずらすと、秋風で冷えた指先に直に肌を撫でられて思わず吐息が漏れる。
大きな期待とほんの少しの恐怖の中で、その先端の突起を恐る恐る指で触れ

「おねーちゃんご飯ー」
「っ!!…今いくー」

空気読め。



「…ふぅ」

イスに座り、少し長く感じる髪をわしゃわしゃと洗いながらため息をつく。
だんだんと気持ちは落ち着いてきたものの、まだ頭は騙し絵の階段をのぼるかのようにぐるぐると堂々巡りを続けている。
突然学生時代に戻され、おまけに身体は女の子…いや、願ったり叶ったりではあるんだけれど事実として受け止めきれないというかなんというか…。
考えながらシャワーで泡を流し、毛先を重点的にトリートメントする。
このままこの身体でこの時代からやり直せるってことなのか…?
スポンジを泡立てて腕から洗い始める。

「…毛、ないなぁ」

最初の感想はそれだった。
もともと毛が薄い体質だったしなぁ。女の子になって余計にってことか。
水を弾くきめ細かい肌を泡だらけにしていく。
いつも通り腕、首筋と洗ってから身体を洗い始める、が。

「っ!」

ぴくん、と小さく全身が震える。
何の気なしに身体をなぞっていったスポンジは、思いのほか胸の先端を強く擦ってしまった。

「びっくりした…」

快感ではなく、弱い部分を直接触られた痛みがじんじんと残っている。

「…ぁ」

女としての羞恥心と男としての興奮に、同時に火がついた。



「んっ…ぁふ…」

泡でぬるぬるになった両手で胸を優しく揉む。
少しずつ頭の中が靄がかり、瞼が重くなってくる。
今まで感じた事のないゆっくりとした快感と幸福感に思考が鈍っていく。

「…っ!」

スポンジで擦られた時とは違う、優しい刺激に思わず身体が仰け反った。
柔らかい身体でそこだけが存在を主張するように固くなっている。
ひと撫でするたびに脳の後ろのあたりにぞくぞくとした快感が走る。

声を出すと家族に聞こえてしまうかもしれない。
でも、もっと気持ちよくなりたい。

緩慢な働きしかできなくなった脳は手の動きを止めることができず、ただただ快感を貪っている。
さらに強い刺激を求めて、指が勝手に乳首をつまんだ。

「ひぁんっ!」

自分の口から出た鼻にかかった嬌声は信じられないほど甘い響きを帯びていた。

罪悪感と恥ずかしさに襲われ、声が外に漏れなかったことだけを祈る。
まだ疼く身体を抱きしめ顔を上げると、浴室の鏡に目がいった。
頬を赤らめ、とろんとした目で自らの泡に包まれた裸体を抱き締める少女と目があった。

―――ぞくり。

再び男としての感情が上回ったのか、身体にともった炎が再び燃え出そうとしていた。
火照った身体を慰めようと、両手が再び性感帯を探して蠢き始め

「おねーちゃんお風呂まだー?」

「…いま上がるー」

お前いい加減にしないと殺されるぞ。



一気に素に引き戻された俺は、あることに気付いた。
俺をこの状態へと導いたと思われる張本人たちがいる場所…そこを確認しなければならない。
着替えも早々に妹に風呂を譲ると、タオルで髪を拭きながら椅子に座りパソコンの電源を…

「…まだパソコン持ってないんだよな…」

ネット環境導入遅かったんだよなぁウチ…。
落胆しながら宿題を早々に済ませると、適当にテレビを見てもそもそとベッドにもぐりこんだ。
布団の柔らかさと暖かさをいつも以上に感じながら、意識は闇の中へと落ちていった。



―――夢を見ていた。

夢の中で、俺は男だった。
学校に行くと、としあきがいなかった。
教室に入ってきた先生が涙目で何かを話している。
何を言っているのかわからない。聞こえない。聞きたくない。



「…。」

窓の外でスズメが鳴いている。
頬を伝う涙を拭い、胸に手を当てて深呼吸した。
ふにゅ、という心地よい柔らかさに幾度目かの紅潮をしつつ、学校へ行く仕度を始める。

今日は、あいつの命日だった。



何事もなく進んでいく授業。
後姿の学ランは頬杖をついて教科書をぺらぺらとめくっている。
退屈そうにあくびしてんじゃねーよ。
そこテストに出るって先生も言ってるだろ。

お前も受けるんだからな。そのテスト。

…絶対、守ってやる。




妙なことを言って話を聞いてもらえなくなるのは避けたかった。
極力普通に接して、いつも通りの日常をなぞっていく。
『そこ』さえ避ければいい。
あいつがあの時間にあの場所にいることだけを。

放課後、それぞれが思い思いに部活や委員会へと向かう。
あいつも例外ではなく、グローブや練習用ユニフォームの入ったカバンを抱えて教室を出て行こうとする。

「としあき!」

止めるのはここしかなかった。
部活が終わってそのまま家路についてしまっては同じ轍をたどってしまう。

「…どうした?」

例のごとくつれない態度。
年頃の男子特有の気恥ずかしさがあるのだろう。

「今日の放課後…教室来てくれない?」

教室ではしゃぐ生徒達はこちらのことなど気にも止めていない。

「なんでだよ」
「なんでも!大事な話だから!絶対ね!」

必死だった。命がかかっているんだから。

「あ…ああ」

としあきは気圧されながら返事をして、部室へと向かっていった。




「ふぅ…」

これで最悪の事態は避けられるはず。
一気に肩の荷が降りた気分だ。

「みぃたぁぞぉ〜」
「ひゃわぁ!?」

背中にもたれかかってきたのはクラスの女子。
昔一度付き合って別れた…あぁ、今からすれば未来か。

「とうとう告白する決心したかぁ〜。お姉さんは嬉しいぞぉ」
「なっ…違っ…ってこら!くすぐったいから!」

傍目から見れば告白のアポとりだったか…失態だ…。
っていうかそれ以上に体格で一回り負けてるこいつにくすぐられてる方がピンチ…ってどこ触ってるのさこの子はああああ!?

「にゃははははは」
「ちょっ…ほんとにやめてっ…てばぁ!」

必死に振り払って距離をとり、ファイティングポーズをとる。内股だけど。

「おぉ?やる気かい?これでもちっちゃいころ空手習ってたんだよ?」

初耳だ。
ほそっこい割に時折食らうパンチが妙に痛かったのはその所為か。
当時お前の腹パンチのおかげで少し腹筋がついた気がしたぜ。

「くっ…!」

近づいたらやられる…距離をとって足を使うしかない。
左で距離をとりながらポイントを重ねて、ガードの隙ができたら…

「きゃははははは脇はだめえええええ!!」

無駄でした。
でもって乱れた制服と荒い息で生徒会室に駆け込んだら注目浴びまくりんぐでした。




「…遅い」

時計はすでに7時半を指している。
部活は7時に終わってるはず…いくら片付けあるって言っても…。

「まさかあいつっ…!」

約束を忘れてそのまま帰っていたとしたら。
いつもの帰り道をいつものようにいつもの時間に通り、そして…。

背筋が寒くなる。
詰めが甘かった。
部活なんてサボらせて帰せばよかった。
無理矢理にでも引っ張っていけばよかった。

「…諦めるかよ」

2度も死なせてたまるか。
マイペースでいい加減で人付き合いは得意じゃないけど、優しいやつなんだ。

必死で階段を駆け下りる。

―失いたくない。

靴も履き替えずに校門を出る。

―生きていて欲しい。

息が切れる。女の子の身体での体力のなさを本気で恨んだ。

―もっと一緒にいたい。

自転車置き場に向かって走る。



そしてそいつは、そこにいた。
星と月があたりを白く照らす。
スポットライトのような電灯の明かりの下に、ペットボトルを持って立っていた。

「悪ぃ…寒いから何か温かい飲み物でも買ってこようと…ってどうした!?」

涙が止まらない。
喜びの所為か安堵の所為か。

「…っく…バカぁ…」

としあきが生きてる。
理性では抑えられないほどに感情が次から次へと沸いてくる。
それは『男』としてのプライドをいとも簡単に飲み込み、ひとりでに言葉を紡がせた。


その日、落ち葉の舞う星空の下で、私達は彼氏彼女になった。





季節は巡り、としあきと一緒の進学校に合格した。
まぁ…中学校の内容だし当然っちゃ当然か。としあきの頭のよさには少し腹が立つけど。
『俺』が通っていたのは男子校だったから、もう歴史はなぞれないことになる。
1人だけストーリーがわかってるのもずるいしね。
それに、

「飲むか?」
「あ、うん」

としあきがいれば幸せだから。




「で、Hはしたの?」
「ぶふっ!」

お茶噴いた。

「なんだまだかぁ…お姉さん期待してるんだけどなぁ」
「何にさ!」

そうそう、この子も同じ高校でした。
彼氏がいるらしくて『俺』としては少し複雑なのですが。

「誘惑してみるとかさぁ。進展がないと見てるこっちもつまんないわけさぁ」
「…そんなんできるかー!」
「としあきくんも我慢してるんじゃないのー?」
「ぅ…」

ヤりたい盛りだよなぁ…身をもって体験してるよ、それは。
変なところで真面目だからなーあいつ。優しさからなんだろうけど。

「…なんか顔見てるだけで惚気られてる気分になってきたよ…」
「いやいやいやいや何言ってr」
「だいじょぶだいじょぶー。無理そうならお姉さん直伝のアレで」
「今更だけどタメだよな私達」



…と、そんなくだらない昼間の会話が今になって浮かんでくる。
としあきの家で勉強しているのだが…今日は両親が出張でいないらしい。
当然のようにうちの両親まで出張なのは誰の陰謀だこのやろう。

「ふぅ…このへんでお開きにするか」
「あ、うん…」

変に意識してしまい言葉につまる。

「じゃあまた明日な、ふたば」

―――としあきくんも我慢してるんじゃないのー?

「ねぇ…」
「ん?」
「今日…泊まっちゃだめかな」





「ん…ふ…」

重ねられた唇から熱い吐息が漏れる。
抱き合いながら転がったベッドからとしあきの匂いがして、全身が包まれているような不思議な感覚になった。

「ふぁ…」

スカートをめくられ、下着の上から腰のラインをなぞる手の動きに思わず全身が震えた。
としあきの大きな背中をきゅっと抱きしめる。

「ゃ…んぁ…」

太腿を指先が這うと、力が抜けてより一層被征服感が強くなる。
自分の身体なのに思うように動かせない。
としあきに好きなように弄ばれている。
それを考えると余計に身体が敏感になり、次々に送られてくる快感と幸福感で胸がいっぱいになっていく。

「としあきぃ…」

制服の上から胸を揉まれ、そこから送られてくる柔らかい快感。
しかし敏感な部分を時折掠めるその動きは余計に身体の疼きを加速させていく。
こらえ切れないその感覚に、としあきの脚に腰を擦り付けたくなる。
が、羞恥心がそれを邪魔してますます疼きは大きくなっていく。

「やだ…お願い…」

何に懇願しているのか自分でもわからなかった。
それでもとしあきは理解してくれたのか、手を少しずつ下に下ろしていく。
脇腹をなぞった指で身体が跳ねる。
下着を下ろされて露わにされたそこに、としあきの指が触れた。

「ぅあんっ!」

溢れそうなほどに濡れた部分を指がなぞると、背筋を電気のように快感が駆け抜けた。
自分で触るのとはまるで違う感触と動きに、身体は悦びを表すかのように震える。

「ひぁっ…んん!…ぁぅ…」
「ごめんもしかして痛い?」

まったく…どこまでも優しいんだなこいつは。

「んん…気持ちいぃ…」

全てをとしあきに委ねる。
胸から、秘所から、止まることなく快感が送られてくる。
頭はもう何も考えられずに、ただそれを享受している。
意思とは関係なく跳ね回る身体。
自分でも恥ずかしくなるような甘い喘ぎ声。
それら全てがとしあきを喜ばせていると思うと、幸せすぎて胸が苦しくなる。

腰のあたりに当たっている固いもの…それを優しく撫でると、一瞬としあきの動きが止まる。
かわいいなぁ。
もっと気持ちよくしてあげたい。
張り詰めて苦しそうなそれを、ゆっくりとさする。
優しく、ときどききつく、撫でられるその先端からは透明な液体がにじんでいた。

「ひぁう!」

お返しとばかりに一番敏感な突起を撫でられ、身体が硬直する。
蕩けきったそこを、男を迎え入れる場所を刺激され続けた肉体は、求めていた。熱く固いそれを。

「ぃぃ…ょ…?」

小さな声で、けれど聞こえるように耳元で囁く。
返事のかわりに身体を抱えなおされ、

「いくぞ…」

こくりと小さく頷いた私のそこに、求めていたそれがゆっくりと挿入ってきた。
焦らしに焦らされていたせいか、痛みよりも快感のほうが圧倒的に大きかった。

「ぁ…あ…」

身体の全てを貫かれたような感覚。
全てを飲み込んだ時、自分の頬を伝うものがあることに気付いた。
としあきが心配してくれている。
やっぱり優しいなぁ。

「大好きだよ…としあき…」

ぎゅっと抱きしめられ、腰が動き始める。

「あ、あん、んんっ!」

一突きごとに恥ずかしい声が出てしまう。
我慢しようとしても男の時には経験したことのない大きすぎる快感がそれを許してくれない。
感じる部分を固いものが擦るたびに、頭の中が真っ白になる。

「や、ぁ、だめっ、ん、おかしく、なっちゃ、ぁ、あっ!」

もう何がなんだかわからない。
気持ちいい。
としあきを感じる。
すごく、幸せ。

「っ…もう…」
「んっ、あっ、いいよ…っ」

自分が何を言ったのかさえわからなかった。
ただ、としあきと一つになりたかった。

「くっ…!」
「――――――!!」








「…ってナマかよ!」
「あぁ、作者に妊娠属性はないからだいじょうbぐほっ!」

正拳突き役に立ったよ、お姉さん。




月日は止まることなく流れていく。
流れるはずのなかった時間までも巻き込んで。

「かんぱーい!」

今日は会社の飲み会。
研修期間を終えて正式配属となった社員の歓迎会的な位置づけらしい。
小さなグラスに揺れる、カルアミルク。
ごめんなさい、ビールの味はいまだにわかりません。

「では、全員揃ったところで改めて…乾杯ー!」

間仕切りで区切られた隣の座敷からもグラスの鳴る音が聞こえてくる。

私は短大を卒業後に地元の小さな企業に就職することができた。
としあきは隣の県にある大学に通っている。
本人曰く幸せにするためにいいとこに就職したいんだそうな。
言った後に自分で照れてるんだから世話ないよ…。

秋の夜風が冷たい。
男と違って酔いつぶれるほど飲むわけにはいかないのですよー。

で、地元に帰ってるとしあきが車で迎えにきてくれるはずなのだが…




「…遅い」

既に電話をしてからずいぶんな時間が経っている。
遠くの方で救急車のサイレンが聞こえた。
妙な既視感に襲われる。
嫌な汗が背筋を流れていく。

―――事故だってさー
―――怖いねぇ…黒の○○だっけ?

通り過ぎていく人達の声に頭を殴られたような衝撃を受ける。
あいつの車種だよ、それ。
身体が震える。
寒さのせいではなく、恐怖で。

「あのバカ…っ」

何回死亡フラグ立てれば気がすむんだよ。
まさかまた置いていく気かよ。


幸せにしてくれるんじゃなかったのかよ。
ずっと一緒にいたいんじゃなかったのかよ。
ちゃんと迎えに来いよ。

…お願いだからっ!


走るのには向かないヒールの靴で駆け出そうとした時、

「悪ぃ、遅くなった」

後ろから声がした。
振り向くと立っていたのは、大好きな人の姿。

「渋滞してたから裏路地抜けてたら時間かかって…事故か何かあったみたいでさ」

視界がぼやける。
やっぱり昔より涙腺緩いよなぁ。

「…っの…バカっ!」

腹に思いっきりパンチしてやった。




翌朝のニュースで、それを初めて知った。
としあきにコーヒーを渡しつつ見たテレビに映っているのは、満天の星空を流れていく光の筋。

「昨日流星群がきてたんだってさ。見にいけばよかったな」
>>227
2007年11月17日(土) 11時45分45秒 公開